”労働相談”ニュース 派遣労働 利益出す手法の数々

7月8日、東京新聞の記事を”労働相談ニュース”として紹介します。

【暮らし】<はたらく>派遣労働 利益出す手法の数々

2011年7月8日

三年前のリーマン・ショックによる派遣切りで、社会問題化した派遣労働。労働者派遣法改正案の国会審議が進まない中、大手と中小の人材派遣会社で社員として勤務経験のある男性(50)が取材に応じ、「派遣会社が利益を出すために、派遣スタッフから搾り取る方法が悪質化している」と指摘した。 (市川真)

男性が指摘したのは、スタッフ登録の短期化。男性が勤めた会社では、スタッフは二カ月更新。労働者を解雇する場合は、三十日前までの通告か解雇予告手当(三十日分の平均給与)支給が、労働基準法で義務付けられているが、二カ月以内の短期労働は対象外。「会社側は、費用をかけずにいつでも解雇できる」と話す。

会社と労働者が折半する社会保険料の支払いは、「正社員の四分の三以上の労働時間」の労働者に適用されるが、これを逃れるための手法が労働時間の切り分けだ。例えば、派遣先企業から三人の派遣を求められた場合、五人以上のスタッフで仕事をさせ、スタッフ一人当たりの週労働時間を三十時間未満にするという。

違法すれすれの例も。派遣先工場までの送迎料金の徴収がそれで、「最低賃金法で定められた最低賃金を割ってしまうこともある」という。

派遣スタッフが派遣会社の法律違反を労働基準監督署に訴え出たとしても、「是正勧告に従って是正するのは、訴え出たスタッフの分だけ。同じ立場にいる他のスタッフは是正せずに、経費を節約する」。

社会保険に加入しているスタッフが月末で退職する場合、年金事務所に退職日を一~二日早く届け出る。制度的に月末に在籍していなければ、会社側はその月の社会保険料を負担しなくてもよいからだ。

「年金事務所が本人に退職日を確認することはない。スタッフには、本人負担となるその月の国民健康保険の支払通知書が送付されるが、意味が分からず見過ごしてしまいがち」という。

完全に違法なケースもある。震災で派遣切りに遭っても、派遣会社が休業補償(残り期間の平均給与の六割)をスタッフに払わない。

最低賃金には、県別と業種別の二種類がある。両方が同時に適用される場合、会社側は最低賃金が高い方で賃金を払わなくてならないのに、低い方で払っている場合もあるという。

さらに、派遣先企業の要求で、どのスタッフを派遣させるか事前に書類選考させることも。これは労働者派遣法の特定行為に当たり、法律に触れる。

男性は「派遣会社の乱立と不況の影響で、派遣労働の開拓はダンピングが横行しているが、そのしわ寄せがスタッフにいっているのが現状」と話す。

◆泣き寝入りせず相談

男性が勤務した派遣会社の手法は、労働基準監督署や年金事務所の裏をかいたり、労働者側が法律をよく知らないことにつけ込んでいるのが特徴。派遣労働に詳しい派遣ユニオン(東京都渋谷区)の関根秀一郎書記長は「泣き寝入りしている派遣労働者は多いのでは」と話す。

関根書記長によると、スタッフ登録の短期化や労働時間の切り分けは顕著になっている。「究極の短期化ともいえる日雇いの派遣会社もある。おかしなやり方だが、違法性を問うのは難しい」という。

労基署に訴え出た派遣スタッフのみ労働条件を改善する、という対応についても「一件ずつ是正していても、全体の問題は変わらない」と、労基署側に対し、会社側への抜本的な指導を求める。

同ユニオンに派遣労働者が訴え出たことがきっかけで、派遣会社や派遣先と協定を結んで解決した事案もある。「泣き寝入りしないことが重要。派遣労働の相談窓口があるので、まずは相談してほしい」と関根書記長は呼び掛ける。