”労働相談”ニュース 〈グリーンスタッフ〉 採用5年目 最後の正社員試験挑戦

6月10日東京新聞掲載の記事を”労働相談”ニュースとして紹介します。

【暮らし】<はたらく>不合格なら雇い止め 採用5年目 最後の正社員試験挑戦

2011年6月10日

有期契約で働く人が一時的、補助的な仕事にとどまらず、正社員と同じ業務を担うケースが増えている。正社員と同じか、それ以上の仕事をこなしても、期間が来れば雇用側の都合で契約を打ち切られる、いわゆる「雇い止め」。仕事で得た技能や知識は、本人はもちろん、教育にコストをかけた企業にとっても財産ではないのか-。(服部利崇)

「不安でしょうがない。もし落ちたら、この先どうなるのか」

JR東日本の契約社員「グリーンスタッフ(GS)」の男性(25)は採用五年目。東京都内の駅で、乗車券を販売する出札を担当する。他社を含めた路線と切符の知識が必要で、鉄道事業に欠かせない仕事。ただ夏に予定されている正社員登用試験に合格しないと、来年四月以降の契約更新はない。

GSは、改札や案内も担当する「JR東日本の駅の顔」(同社ホームページ)。経費削減などを目的に一九九九年、旅行窓口から導入された。二〇〇七年から出改札や案内まで拡大された。業務は正社員とほぼ重なる。一年契約で、泊まりを伴う夜勤に就けば年収は額面三百五十万円を超える。四回まで更新可能で最長五年間、働ける。

入社三年目から受けられるGS向けの正社員登用試験が始まったのは〇九年。百六十八人が合格した。JR東日本労働組合の調査では、一〇年も百六十八人が受かった。一方で合格率は39%から26%に下がった。「採用増は考えにくい。過去不合格だったGSも挑戦するから、より狭き門になるだろう」と、同組合東京地方本部業務部長の阿部正明さんは懸念する。

採用人数や合格基準は未公表。出札に携わる五年目の男性(31)は「試験内容は業務と関係ない一般常識。働いて得たものが問われない試験なんて…」と話す。

正社員と同じ制服に身を包み、人間関係も積み上げた。職場や仕事への誇りもある。出札業務五年目の男性(24)は「ずっとこの会社で働きたい」と熱い思いを語る。

一部を正社員に登用しているとはいえ、試験に受からず、雇い止めになれば、積み上げた知識や技能を生かす場はない。

JR東日本は取材に応じていないが、同組合東京地本業務担当部長の大谷朋彦さんは「技能や知識は人に宿る。新人正社員を指導するGSもいる。会社の財務体力からすれば全員を正社員で雇える」と指摘する。

厚生労働省の〇九年調査では、有期契約労働者のうち正社員と同じ仕事に就く人は28・3%。有期労働者を雇う企業の53・6%が正社員と同じ仕事をさせていた。正社員から有期への移行は進んでいるようだ。

細切れの更新を繰り返す有期は、正社員より賃金が低い。日本労働弁護団常任幹事の中野麻美弁護士は「会社側は雇用の“柔軟性”確保のため、有期を積極的、多面的に使っている」と指摘する。

有期は「短期で成果を上げないと評価されない」ため、正社員も試されているという。「厳しい選別は、正社員には『あなたにこれだけの業務能力はある?』という会社からの問い掛けに映るはず」

厚労省の労働政策審議会は現在、有期契約の規制強化に向け、法制化も含めて議論している。正社員から有期への置き換えに歯止めがかけられるのか、注目される。

<グリーンスタッフ> JR東日本のホームページなどによると、駅の出札、改札、案内、旅行窓口を担当する。東京23区などを管轄する東京支社の77駅には、駅長以下約4200人の駅員(輸送職は除く)がおり、うちGSは約1000人。年2回、既卒と新卒に分けて採用し、今年は計約400人の採用を予定。正社員登用試験は、通常の社会人採用とは別枠で年1回。38歳を超えると受けられない。