1月18日東京新聞記事を掲載します。愛知・知多地方の有料道路、360人解雇・雇い止めに。料金収受業務の受託者変更。

 1月18日、東京新聞「働く現場から」欄の記事を掲載します。

<はたらく 現場から>愛知・知多地方の有料道路 360人解雇・雇い止めに

2013年1月18日

 愛知県道路公社が運営する知多半島道路など、知多地方の有料道路の料金所で働く高齢者ら約三百六十人が、三月末で解雇・雇い止めになる。長年、受注してきた会社が入札で敗れ、新年度以降の業務を受注できなかったためだ。四月から業務を担う業者に移り、働き続けることもできるが、待遇悪化は必至。急激な賃金の引き下げにつながる入札のあり方に疑問の声も上がる。(稲田雅文)

 「面談で、年収は現在の二百九十万円から百万円ほど下がるとの見通しを告げられた。別の仕事を探すしかない」。小学生と幼稚園児の三人の子どもがおり、まだまだ稼ぎが必要な収受員の男性(62)は、肩を落とす。

 男性は長年、公社から料金収受業務の委託を受けてきた「愛知道路サービス」(同県半田市)の正社員。料金所のブース内で通行車両から料金を徴収したり、自動料金収受システム(ETC)でゲートが開かないなどのトラブルに対応したりするなどの業務で、三年近く働いてきた。だが昨年十一月に突然、三月末での解雇を告げられた。

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 愛知道路サービスは、公社が運営する知多半島道路、南知多道路、中部国際空港連絡道路など五路線の料金収受業務を担う。公社の業務を民営に移すのに伴い、一九八三年に設立された。公社と資本や人的な関係はないが、歴代の経営陣は県OBが務めてきた。五十代でも正社員として入社でき、六十三歳の定年後も七十代まで働ける職場として、知多地域の雇用を支えてきた。

 設立当初から、毎年の随意契約で業務を受託してきたが、公社は「管理の適正化のため」として二〇〇七年度以降、三年ごとに競争入札を実施。三回目の今回、他の有料道路で料金所の運営を担う三重県四日市市の業者が、一二年度の委託費十億千七百万円より二割安い八億千百十万円で落札した。約千七百万円差で落札できなかった同社は、公社運営の別の有料道路でも新年度以降の料金収受業務を落札できず、会社存続が難しくなった。

 落札した業者は「今働いている人たちを優先的に雇用したい」とし、同社の社員らと今後新たな雇用契約を結ぶ考え。ただ、正社員は契約社員かパートとなり、退職金もなくなる。給料はカットする方針という。

 労働面でも待遇が悪化しそうだ。収受員は、午前八時半に出勤すると翌日の午前九時まで拘束され、間に仮眠時間を挟んで八時間の労働を二回こなす。正社員は月に十回、アルバイト従業員は月五、六回勤務するが、落札した業者は、より多くの勤務回数をこなすよう打診してきているという。

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 大幅な賃金カットを提示された正社員の女性(56)は「一人暮らしでも何とかやっていける職場だと思っていたが、とてもではないが生活が成り立たない」と話す。一カ月当たりの勤務回数を増やすことを打診された正社員の男性(55)は「体の負担が大きくなるので、低い賃金になることを覚悟の上で、より少ない勤務回数で済むパート職員として応募するしかない」と語る。

 東海労働弁護団事務局長の樽井直樹弁護士は、千葉県野田市や川崎市などで、自治体が発注する公共事業で労働者の賃金が著しく低くならないよう、受注企業に指定した賃金以上の支払いを義務付ける「公契約条例」を制定する自治体もあると指摘。「公共団体が発注する事業には雇用の視点も重要で、労働条件が急に悪くなるような入札のあり方は問題では」とする。