「2013年版経営労働政策委員会報告」を徹底・批判弾劾する!合同・一般労働組合全国協議会事務局長 小泉義秀

2013年版経営労働政策委員会報告」を徹底・批判弾劾する

合同・一般労働組合全国協議会事務局長 小泉義秀 

はじめに

 2013年経労委報告は、外注化攻撃とともに原発再稼働攻撃を柱にしたものだ。この日帝ブルジョアジーの意を体した安倍の原発攻撃がここまでむきだしになっていることは、この攻防に帝国主義そのものの存亡と最大の破綻点があるからである。だからこそ日帝・安倍は、3. 1 1フクシマへの圧殺に総力をかけている。だがこの「フクシマ圧殺」と徹底的に闘い抜くことは、幾百千万の大衆的規模での国家や資本への根底的怒りと階級意識の覚醒をつくりだしていくものとなる。経労委報告は、「活力ある未来に向けて」「労使一体となって危機に立ち向かう」という表題で、大恐慌、3. 1 1情勢下の日帝ブルジョアジーの危機を、これまで以上に「労使一体」を正面にうちだすことで、国内階級戦争を宣言する極反動的内容となっている。今経労委報告は、きわめて反動的であるが、その本質においてはまったく自信のない破綻的内容ともなっている。まさに日帝・新自由主義の凶暴性と破綻性は明らかであり、新自由主義には労働者階級の団結で勝利できるという確信をつかむことができる。経労委報告は、JR東日本の「グループ構想V」そのものであり、ブルジョアジーが総カで原発再稼働、原発推進、原発輸出にむかっているということである。外注化阻止・非正規職撤廃決戦、反原発決戦で阿部政権を打倒しよう。

原発再稼働を柱に6重苦克服を叫ぶ経団連           

 原発再稼働を柱に6重苦」克服が経労委報告の核心テーマである。6重苦」とは「①円高、②重い法人税・社会保険料負担、③経済連携協定の遅れ、④柔軟性に欠ける労働市場、⑤行き過ぎた温暖化対策、⑥電力供給不足・コスト増。」(56頁)のことである。

 したがって、6重苦解決のためには原発しかないということが先ずはじめに強調されている。

「国内事業を継続していくためには、電力料金を経済性のある価格で維持し続ける必要があり、原子力を含む多様なエネルギーの選択肢を維持することが不可欠であるにもかかわらす、2030年代の原発稼働ゼロを目指した「革新的エネルギー・環境戦略」が打ち出された。再生可能エネルギーや省エネの技術水隼に鑑みれば、その実現は到底不可能であり、雇用の維持のためにも、見直しが必要である。」(4頁)

 次の②の法人税については毎年出されていることであるが、以下の部分がその核心的主張である。

「国内の企業活動が極めて困難になっているにもかかわらず、事業環境の改善に向けた政策転換はあまり進んでいない。日本の法人実効税率は2012年度より38.%に引き下げられたが、研究開発促進税制の縮減などの課税ベースの拡大も同時に実施されたため、個別企業ではむしろ増税となっているケースもある。競合する中国や韓国の税率は20%台半ば、先進諸外国もさらに税率を引き下げる動きがある中で、日本の法人税負担の重さは一層際立っている。法人実効税率を早期に引き下げるとともに、研究開発促進税制の大幅な拡充を通じて、立地競争力を高め、国内での生産意欲と競争力の向上、さらには雇用の創出につなげることが求められる。」(14~15頁)

 法人税率が高いというが、「企業向けの優遇措置は多く、毎年、国内企業の7割前後が法人税を納めていない。1990年代の金融危機で巨額損失を計上した大手金融機関は、税金で立ち直ったあとも、最近まで20年近く納税していなかった。過去の損失を何年間も持ち続ける制度があるからだ。」(2013年1月25日付東京新聞朝刊11面)と指摘されているように数多くの優遇措置が取られていて、経労委報告で出されている数値だけでは比較できない。高い高いというのはペテンなのだ。

TPPについては最大の課題と位置付けている。

TPPへの早期参加をはじめ、日本が関わる経済連携全般の推進による国内の就労機会の維持・拡大に向けて、労使が協力し、必要な働きかけを行うべきである。」(同)

 自民党は『聖域なき関税撤廃のTPP反対』を掲げて昨年の衆院選に勝利した。しかしこのスローガンはペテンである。関税に聖域・例外を設けないのがTPPであって、そうでないTPPTPPではない。いずれにしても自民党の国会議員200名が反対し、選挙公約で反対を掲げたTPPを簡単に飲むわけにはいかない。TPPはこれだけで自民党政権がぶっ飛ぶような問題であり、これを経労委報告が前面に押し出している点に日帝の危機性がある。

 例えば、農文協が2010年に刊行した『TPP反対の大義』(ブックレット)の100頁に北海道大学大学院助教の東山寛さんが書いている文章『オール北海道で反対する』では、道の「TPPによる北海道への影響試算」を表で示している。それによれば農業関係の経済的損失は2兆1254億円である。失われる雇用は17万3000人。農家の減少は3万3000戸である。北海道農業の主要7品目をみてみると、米・小麦・甘味資源・でんぷん原料・養豚が100%壊滅。酪農は72%、肉用牛は82%壊滅するとのこと。同時期農林水産省が19品目について試算し、農業の壊滅度合いを試算しているがほぼ同じ数字が出ている。甘味資源は北海道の場合はビートであり、沖縄だとサトウキビが壊滅する。でんぷん原料は言うまでもなくジャガイモである。北海道の比較的大規模農業が壊滅するわけだから全国の農業が壊滅することになる。関連する産業、地域経済全体をとってみてもその打撃の深さは計り知れない。経労委報告はこれを第1の課題に掲げているのである。破産の極みである。

非正規を全面化しようとする攻撃

 最近の労働政策を巡る一連の改悪を「企業活動を制約し、経営環境の悪化に拍車をかけるような規制強化策ばかり」と述べている。

「最近の労働政策は、企業活動を制約し、経営環境の悪化に拍車をかけるような規制強化策ばかりとなっている。

2012年通常国会で、労働者派遣法、労働契約法、高年齢者雇用安定法((以下、高齢法)が相次いで改正された。労働契約法の改正により、企業は有期契約の更新を慎重に検討せざるを得ない。需給変動への柔軟な対応に支障をきたしかねないだけでなく、有期労働者の仕事を通じたスキルの向上を困難にする恐れもある。労働者派遣法の改正にしても、派遣という働き方を積極的に選択する労働者の就業機会を奪うにとどまらず、迅速な需給調整機能という労働者派遣制度の最大のメリットを減殺する。高齢法の改正については、解雇事由または退職事由に該当する場合を除き、労働者本人の希望のみをもって、高齢者の雇用確保を企業に強いるものであり、企業組織の新陳代謝を阻勢する恐れもあり、若年労働者の就業にも大きな影響を及ぼすことが懸念される。(17頁)

 この部分が「④柔軟性に欠ける労働市場」ということである。我々の側からみるとブルジョアジーへの規制ではなく、労働法制の改悪である。しかし、この改悪が規制というのだ。あらゆる規制・制約をすべて取り払えというのが新自由主義の本音である。したがって、ここではブルジョアジーの側から「規制強化」として「批判」しているのだ。この「報告」の責任者の経団連副会長・経営労働政策委員長の日本郵船会長・宮原耕治は、「解雇規制は、経営としては、他の規規制も含めて緩和し、最大限の白由度を持ちたい」(2013・1・26日発行東洋経済)と「クビキリ自由」を倣然と言い放っている。

 労働契約法については、無期転換に応じられないから、5年を前に雇い止めにするなどの措置をとるということだ。派遣法についてはいくつかの点でこれまでとは違う縛りが資本の側にかかったのは間違いない。一番大きいのは「派遣先が違法派遣と知りながら派遣労働者を受け入れている場合、違法派遣が発生した時点において、派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申し込み(直接契約の申し込み)をしたものとみなす」という「労働契約のみなし制度」が制定されたことだ。しかしこの法律の施行は3年後の2015101日に先送りされた。この3年の間に偽装請負等を事実上合法化する仕組みを実態的に作り、「みなし制度」を形骸化しようとしている。ショーワの中労委命令やジェコーの反動判決はそういう転換が反映している。高齢法の改正に対してはNTT型の賃金引下げや外注化を促進して対応しようとしている。確かに資本にとってはある面では規制がかかったということだが、これを逆テコにして更なる非正規化を進めようとしている。そのために簡単に首が切れない、非正規化できないあり方を「柔軟性に欠ける」と非難しているのである。

 次にかみついているのが最賃法についてである。

生活保護との乖離解消の影響が同じランクや近隣地域にも及んで大幅な引き上げを強いられたことなどが挙げられる。このような異常事態は、中央最低賃金審議会が示した目安を参考に格地方最低賃金審議会が「全会一致」を目指して真摯に話し合った結果を踏まえて決めるという「最低賃金決定プロセス」への信頼を大いに揺るがしている。(23~24頁)

 最低賃金について「大幅な引き上げを強い」「異常事態」と述べているが現在の地域別最賃はいくらなのか?10月の改定で幾ら上がったのか? 以下は厚生労働省のホームページで公開されている全国の最低賃金一覧である。都道府県名・改定後の賃金・改定前の賃金・改定された年月日の順で示されている。

  北海道719(705)平成24年10月18日、青森654(647)平成24年10月12日、岩手653(645)平成24年10月20日、宮城685(675)平成24年10月19日、 秋田654(647)平成24年10月13日、山形654(647)平成24年10月24日、福島664(658)平成24年10月1日、 茨城699(692)平成24年10月6日、栃木705(700)平成24年10月1日、群馬696(690)平成24年10月10日、 埼玉771(759)平成24年10月1日、千葉756(748)平成24年10月1日、東京850(837)平成24年10月1日、 神奈川849(836)平成24年10月1日、新潟689(683)平成24年10月5日、富山700(692)平成24年11月4日、石川693(687)平成24年10月6日、福井690(684)平成24年10月6日、      山梨695(690)平成24年10月1日、長野700(694)平成24年10月1日、 岐阜713(707)平成24年10月1日、 静岡735(728)平成24年10月12日、 愛知758(750)平成24年10月1日、三重724(717)平成24年9月30日、滋賀716(709)平成24年10月6日、 京都759(751)平成24年10月14日、 大阪800(786)平成24年9月30日、兵庫749(739)平成24年10月1日、 奈良699(693)平成24年10月6日、 和歌山690(685)平成24年10月1日、鳥取653(646)平成24年10月20日、 島根652(646)平成24年10月14日、岡山691(685)平成24年10月24日、     広島719(710)平成24年10月1日、 山口690(684)平成24年10月1日、徳島654(647)平成24年10月19日、香川674(667)平成24年10月5日、愛媛654(647)平成24年10月24日、高知652(645)平成24年10月26日、福岡701(695)平成24年10月13日、 佐賀653(646)平成24年10月21日、長崎653(646)平成24年10月24日、      熊本653(647)平成24年10月1日、 大分653(647)平成24年10月4、宮崎653(646)平成24年10月26日、 鹿児島654(647)平成24年10月13日、 沖縄653(645)平成24年10月25日、 全国加重平均額749(737)。

 最賃が大幅に上がったことを強調しているが、一番高い東京で850円であり、全国加重平均で749円。12円しか上がっていないのだ。一番低いのが島根・高知県で652円。島根県は6円上がっただけ。高知県は7円である。現実には最賃違反が公然と行われている。先日、昨年の11・4集会前の新宿東南口街宣で出会った労働者と会って話を聞いたら、彼の賃金は実働8時間で5700円。時間当たり712・5円であり、最賃違反である。神奈川は849円だから、135・5円少ない。有期労働契約のアルバイト扱いで、半年契約を8年間続けてきているが、有給休暇を取ったことが無いという。時給は8年前なら最賃違反では無かった。8年前の神奈川の最賃は710円だった。そのときは違反では無かったが最賃ぎりぎりの賃金である。現在月収12万。これが青年労働者の置かれている実態なのである。

 橋下が昨年末の選挙公約で最賃法廃止を打ち出した。批判の嵐の中で引っ込めたものの、これはブルジョアジーの意思である。最賃法があるために一人の雇用しかできない、最賃法を廃止して2~3人の雇用を実現すべきというのが維新の会・橋下の主張だった。652円の高知県や島根県で3人を雇うとするとどうなるのか。652円×8時間=5216円。これを3人で割ると1739円である。1739(日給)×25(日)=43500円である。20日しか働けなければ34780円である。新自由主義は労働者が生きていくに必要な最低限の賃金すら支払おうとしない飢餓賃金で死ぬまで働かせようというのがその本質である。

 自民党の生活保護費の1割削減はこの最賃法を巡る攻防と一体のものだ。生活保護費を切り下げ、最賃法そのものの形骸化・廃止を画策する、経労委報告を徹底的に弾劾しなければならない。 

短時間労働者の時間当たり賃金は正規の6割―これが高い賃金か

 次に許しがたいのはパート労働者の賃金が上昇傾向にあり、これ以上の賃金上昇を許してはならないと主張していることである。 

労働側は、「誰もが時給1, OOO円」「賃金カーブ維持相当分プラス1%を目安とする時給の引き上げ」を目指すなど、非正規労働者の時間給引き上げへの取り組みを今年も掲げている。しかし、厚生労働省の調査によると、パートタイム労働者の時間あたりの現金給与総額は2005年から上昇を続け、2011年は1, 050(2005年比で約6 %)に達しており、賃金水準の引き上げはかなり実現している。さらに、賃金カーブという概念がそもそも成立しない非正規労働者の賃上げ要求にあたって、「賃金カーブ維持相当分」を掲げていることには疑問がある。非正規労働者の処遇、とりわけ賃金は、労働市場の需給関係の影響を受けることを踏まえる必要がある。また、特定層にだけ着目するのではなく、すべての従業員における総額人件費の問題として捉える視点が大前提である。(75頁)

 この記述が一番怒りに堪えない。2011年のパートタイム労働者の時間当たり賃金は「平成23年賃金構造基本統計調査(全国)の概況」(厚生労働省 2012年2月22日)によると2011年男性平均では1092円、女性の場合は988円である。平均だけ見ると実態が良くわからない。短時間労働者の年齢・性別比較の表を見ると短時間労働者は73・8対26・2(女性・男性)となっている。正社員・正職員の賃金を100とすると男女計で正社員・正職員の賃金は63(前年64)、卸売・小売業、金融、保険業では58(同59)であるので、決して上昇しているわけではない。むしろ格差が拡大傾向にある。「賃金カーブという概念がそもそも成立しない非正規労働者」ということは非正規の賃金は上がらなくて良いものだという考え方に基づいていて、許しがたい。「すべての従業員における総額人件費の問題として捉える視点」というのは正規の賃金を上げるためには非正規の賃金を下げろということであり、非正規の賃金を上げるためには正規の賃金を下げろという正規と非正規の分断・対立を煽る考え方であり、とんでも無いことである。

次の就業規則の改定問題の記述も重大である。

定期昇給制度や年功処遇の見直しが喫緊の課題となっている。ところが、就業規則による労働条件の不利益変更の有効無効に関する裁判所の判断については、事前に予測することが極めて困難であることから、企業は機動的な制度の見直しに躊躇しがちである。労働条件の不利益変更ルールを透明化すべきである。

注※労働条件の不利益変更のルールは、個別契約、労働協約による競業規則により労働条件を変更する場合、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の不利益の程度、変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合などとの交渉の状況その他の事情に照らして合理的なものであるときは、変更後の就業規則が有効であるとしており(労働契約法第10)、事案ごとに判断が異なる。(19~20頁)

 就業規則の一方的不利益変更は労基法第90条違反という判例が多々ある。『従業員過半数代表の意見を聴取しないで作成された就業規則は有効ではない』((片山工業事件 岡山地判昭40・5・31労民集16-3-418)。この原則を「事案ごとに判断が異なる」から透明化せよという言い方をしながら就業規則の変更は資本の勝手にできるようにせよと主張しているのである。変更後周知させれば済む問題ではなく、合理的であれば良いというものでもない。従業員代表もしくは労働組合の意見を聞かずに一方的に就業規則を変更することは許されないのである。

 最後におさえておきたい点は、朝日新聞で連載された「マクド難民」「追い出し部屋」の話である。 

企業が抱える余剰人員の数(雇用保蔵者数)2008年秋以降急激に増加しており、内閣府の手法を用いて試算すれば、日本全体で見た規模は2011年末時点で約460万人台となり、雇用者全体の8 %以上に達する。経済が成長し、企業活動が活生化することで、企業内余剰人員が顕著に減少しなければ、総額人件費の高止まりを招くことになりかねないことに十分留意する必要がある。

注※雇用保蔵とは、企業部門の稼働率から考えられる、最適な雇用者数と実際の常用雇用者数の差である。(67頁)

 人材活用センターのようなものを企業内に作り、自主退職若しくは解雇に追い込むことを視野に入れて、実践しているということである。「雇用保蔵」とか、企業内余剰人員」最適な雇用者数」という概念を粉砕しなければならない。現実には長時間残業やサービス残業を強制し、正規を非正規労働者に置き換えることによって企業内余剰人員」が生み出されているのであり、労働者を余剰呼ばわりして「追い出し部屋」に入れる資本と闘わなければならない。そのためにもそういうことを容認するだけでなく、資本と一緒に行っている腐りきっ御用組合指導部を打倒して、闘う労働組合を甦らせなければならない。外注化阻止・非正規職撤廃、JRを巡る攻防が最大の焦点である。2・17国鉄集会に大結集しよう!