4月26日東京新聞記事を掲載します。外箱のへこみで事故商品に… 運転手自腹で弁済、負担求める会社側 「解雇が怖い」と我慢

<はたらく>外箱のへこみで事故商品に… 運転手自腹で弁済

2013年4月26日

 

段ボール箱についたこの程度の傷で弁償させられることも

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 いつでも安心できる商品が手に入ることは消費者の理想だ。だが、その陰には「事故商品」を、トラックの運転手が自腹で弁済している実態がある。私たちの生活の利便性は、働く人の泣き寝入りの上に築かれている側面もある。複数の運転手が証言する。 (三浦耕喜)

 東京都内の運送会社で働く男性(44)は、デジタルカメラの画像を示した。アイスクリームが詰まった段ボール箱の脇に、何かの角が当たってできたような、少しだけ切れ目の入ったへこみが付いていた。

 「これだけで、商品は受け取ってもらえない。何ダースかある中身の品は、すべて運転手の弁済になる。店の利益も含まれているからと、原価ではなく店頭の価格で買わされる」

 男性は主に冷凍食品をスーパーなどに配達している。以前は商品事故があれば会社が穴埋めしてくれた。そもそも、中身が無事なら段ボールに多少傷が付いても受け取ってもらえた。「中身を保護するための段ボールだから」と男性は言う。

 それが変化したのが二〇〇八年の中国製ギョーザ中毒事件のころから。食品業界は製品に異物が混入されることを恐れ、小さな傷にも敏感になった。並行して、リーマン・ショックもあって景気も悪化。会社は負担を運転手に求めるようになった。男性は「最近は商品が取り出しやすく、ごみも出ないよう包装も簡略化されている。その分、傷も付きやすい。地球に優しいエコも、私たちには厳しい場合もある」と言う。

 さらには「それが給与体系にも組み込まれている」と、男性は訴えた。男性の給与明細には、「返済」「借入残」の欄がある。「今月の給与から引かれた弁済金が『返済』、まだ残る弁済金が『借入残』」。中には、「借入残」が十数万円の運転手もいるという。

 理不尽な弁済金だが、雇われる身は弱者だ。男性は「解雇されるのが怖い。弁済金はすごく痛いが、仕事を失うよりはましだから、泣く泣く払う運転手がほとんど」とため息を漏らした。

 主に生鮮食料品を運ぶ他の運転手(37)も言う。「牛乳パックを詰めて重ねたコンテナが、丸ごと倒れる事故があった。実際に壊れたパックは一個でも、『牛乳が他の商品にかかった』と、受け取ってもらえなかった」

 荷物を運ぶ前に異常が見つかれば、商品を交換でき、運転手が弁済する必要はない。だが、「短時間で何百箱も積まなければならないのに、ひとつひとつ点検すれば三倍の時間はかかる」と運転手。ぎりぎりまで人を削った現場に余裕はない。

 労使交渉に持ち込まれたケースもあった。神奈川県内の運送会社では、商品事故を報告した運転手の手当をカットしていたが、労組の要求で撤回した。労組役員(41)は「手当カットを恐れて運転手が自己弁済し、結果として事故隠しが横行する原因になっていた」と指摘する。

 従業員のミスで会社に損失があれば、使用者が従業員に賠償を求めることは法的に認められている。だが、それには、使用者が従業員のミスを証明しなければならない。それに、ミスが認められても、使用者にも連帯責任があり、賠償額は減額されることが判例で確立している。調べもせず、運転手に全額を負担させることは本来できない。

 それでもまかり通る弁済に、生鮮食料品を運ぶ前述の運転手はつぶやいた。「荷主や納品先はお得意様で、運送会社は言い返せない。暗黙の了解で運転手のせいにしている感じがする」