5月31日東京新聞記事を掲載します。「通算5年上限」就業規則に反発 大学非常勤講師の契約問題 労組、早大を刑事告発 大阪大でも告訴へ

<はたらく>大学非常勤講師の契約期間 「通算5年上限」就業規則に反発

2013年5月31日

 

非常勤講師の雇用契約期間の上限を、通算5年とする就業規則を定めた早稲田大=東京都新宿区で

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 非正規労働者が五年を超えて勤めると、期間の定めのない雇用契約に転換できるとした四月の労働契約法改正を受け、大学で働く非常勤講師の契約期間を通算五年に限る動きが出ている。五年上限を定めた就業規則を新たに制定した早稲田大では、非常勤講師の労働組合が大学を刑事告発。同様に五年の上限を設けた大阪大でも、反発が広がっている。(稲田雅文)

 早大で語学の非常勤講師を務める四十代男性は三月下旬、大学から届いたメールの内容に目を疑った。非常勤講師向けの新しい就業規則で、これまで上限がなかった雇用契約期間を通算五年までとする内容だった。

 一コマ九十分の講義をする契約を、一年ごとに更新する働き方を十年以上続け、別の大学の講義を掛け持ちしても年収は三百万円ほど。妻と共働きで家計が成り立っている。新しい就業規則が適用された場合、五年後に収入は半減するかもしれず、不安を抱えながら教壇に立つ。「大学が弱い立場の人間を切り捨てるようなことをして、まともな教育ができるのか」と憤る。

 早大文科系の非常勤講師を務める五十代男性は、昨年度のカリキュラム改編に伴い、受け持つ講義数が半減した。別の大学の講義も、同じくカリキュラム改編で二年後になくなる。五年後に残りの講義もなくなったら「生活は成り立たない」と男性。

 専任教員の募集に応募をしているが、断られるばかり。「この年だと専任教員となるのは無理。新しい職に就くのも難しい」

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 首都圏大学非常勤講師組合の松村比奈子委員長らは四月上旬、大学が進めた就業規則作成の手続きは、労働基準法に違反している疑いがあるとして、早大の鎌田薫総長と常任理事ら計十八人を東京地検に刑事告発した。

 同法九〇条では事業主に対し、新しく就業規則を作成するときは、事業場ごとに労働者の過半数代表者の意見を聞くよう定めている。就業規則作成の動きを知った組合の申し入れで実施された団体交渉で、大学側は二月に過半数代表の選出の手続きを進めたと説明した。しかし、組合によるとこの時期は入試期間だったため、非常勤講師は大学構内に入れなかったという。

 松村委員長は「大学の教育を支える非常勤講師の意思を反映させないための悪質な期間設定だ」と批判する。

 組合によると、早大では教授など専任や専任扱いの教員は二〇一二年度に約二千百五十人。これに対し、非常勤講師は約三千七百六十人に上り、客員教授らも合わせた非常勤の教員は四千二百六十人にも上る。年収一千万円を超える専任教員がいる半面、非常勤講師は同じような教育研究で百五十万円にしかならない。松村委員長は「五年の雇い止めは格差を永続化させ、大学内の身分制社会を固定化する」と語る。今後は労働委員会に救済を申し立て、五年上限の撤回を求める考えだ。早大は「詳細が分からないため、コメントは控えたい」とした。

◆大阪大でも告訴へ

 大阪大も四月、非常勤講師の契約期間の上限を五年とする規定を設けた。関西圏大学非常勤講師組合は、労基法違反で大阪大を大阪地検に告訴する考えだ。

 組合は団体交渉で五年の上限を設けないよう求めたが、大学側は「非常勤講師と結んでいるのは労働契約ではなく、民法に基づく準委任契約。労働者に当たらない」と主張。過半数代表者の意見を聞かないまま、規定の施行を強行したという。

 組合の新屋敷健委員長は「労働者でなければ、労働契約法に基づいて、五年の上限を設ける必要はないはず。大学は法律の都合の良いところだけ持ち出している」と批判する。大阪大は「毎年予算が削減されており、実現できない約束はすべきではない」と五年上限を設けた狙いを説明する。