産業競争力会議課題別会合(第4回)-「新しい労働時間制度の創設」批判 合同・一般労働組合全国協議会事務局長 小泉義秀

 小泉事務局長の別紙提起を掲載します。

 産業競争力会議第4回批判

産業競争力会議課題別会合(第4回)-「新しい労働時間制度の創設」批判

        2014年6月1日 合同・一般労働組合全国協議会事務局長 小泉義秀

労働時間規制撤廃を成長戦略の要とする安倍政権

産業競争力会議課題別会合(4) が5月28日16時55分~18時まで首相官邸の大会議室で開催された。議事次第は「女性の活躍推進について」「労働力と働き方」の2点だ。この会議に6つの資料と2つの参考資料が提出されているが、後者の「労働力と働き方関係」関連では特に「資料5」と参考資料2について注視する必要がある。

 会議後の甘利経済再生担当大臣の記者会見要旨のポイントは以下の点である。「新しい労働時間制度」については①全ての労働者が対象となるのではなく、イノベーティブな職責を果たす専門的人材であること。②「残業代ゼロ」ではなく、職務・成果に応じ、短時間の勤務でも報酬を確保することが可能な制度であること。③「労働時間上限」「年休取得下限」等の量的制限の導入など十分な措置をとること。

 田村大臣が労働時間、紛争処理システムについて①「企業の中核部門・研究開発部門等で裁量的に働く労働者」を対象に、裁量労働制の新たな枠組みを構築する。②「世界で評価できる世界レベルの高度専門職」を対象に、新たな労働時間制度の構築を検討する。③予見可能性の高い紛争解決システムについては、労働審判事例等を分析し、我が国の実情に応じた対応について検討する、としている。

 議論として民間議員から「競争力強化のため、働きやすい選択肢を作ることは重要である。現行の裁量労働制では、割増し賃金が適用され、同じ仕事でも効率的に働いた労働者よりも時間をかけた方が、賃金が高くなる。公平性の観点からも問題がある。研究者、技術者、調査担当者については家で仕事をするなど、時間に縛られない働き方を求めており、欧米では当たり前となっている。経団連では適用除外制度の創設を提案している。長谷川主査の提案は規制改革会議の提案をより具体化したものであり、全面的に支持する。」

「国際水準から見てもより成果に重点を置いた制度を作るべきだ。ブラック企業の撲滅や健康管理など労働者の保護を図ることは前提として、商品開発、ブランド形成関係者等に限定した上で、成果で評価する新しい働き方の選択肢を作るべき。日本経済に注目が集まっている今こそ、労働政策が変わっていくというメッセージを出すべきである。」

「世界レベルの一握りの高度人材に限定しても意味がない。適用範囲は広げていただきたい」と最初から適用範囲を拡大する意見が出されている。

最後に安倍が以下のようにのべたという。

「働き手の数に制約がある中で、日本人の意欲と能力を最大限に引き出し、生産性の高い働き方ができるかどうかに、成長戦略の成否がかかっている。あわせて、少子高齢化が進む中、子育てや介護などと仕事とをどう両立するかは、大きな課題である。社会の発想を変えなければならない。そのためには、働き手が十分才能を発揮し、各人の事情に応じて柔軟に働き方を選べるように、働き方の選択肢を増やすことが重要である。このため、成果で評価される自由な働き方に相応しい、労働時間制度の新たな選択肢を示す必要がある。新たな選択肢については、『長時間労働を強いられる』あるいは『残業代がなくなって賃金が下がる』といった誤解もあるが、そのようなことは、絶対にあってはならない。まずは『働き過ぎ』防止のために法令順守の取組強化を具体化することが、改革の前提となる。その上で、新たな選択肢は、①希望しない人には、適用しない。②職務の範囲が明確で、高い職業能力を持つ人材に、対象を絞り込む。③働き方の選択によって賃金が減ることの無いように適正な処遇を確保する。この三点の明確な前提の下に、検討していただきたい。こうした限られた人以外の、時間で評価することが相応しい、一般の勤労者の方々には、引き続き、現行の労働時間制度でしっかり頑張ってもらいたい。」

労使合意で労基署に届ければ残業代をゼロにできるようにする労基法解体の攻撃

 新しい労働時間制度の創設を求める経済界の提言・発言(ご参考)「参考資料2」を読むとブルジョアジーが何を画策しているかが良くわかる。

ポイントの①は「経営労働政策委員会報告」(経団連 2014年1月15日)で出された「労使自治を重視した労働時間法制に見直すべき」という点と「労働時間・深夜労働の規制の適用を除外する制度を創設すべき」である。ポイントの②「労働政策審議会」(2014年3月19日)で三浦惺(さとる)日本電信電話会長から出された「労働時間等の規定を外すような見直しも必要」と述べている点だ。ポイントの③は「規制改革会議・公開ディスカッション(2014年3月25日)で川本裕康経団連常務理事から「高度な裁量を持って働く一部の事務職や営業職、研究職等を対象に健康確保措置を強化して、労働時間、深夜労働の規制の適用を除外する制度をパッケージとして創設することは喫緊の課題であると思っている」と述べている点と「個別企業の労使自治を重視した労働時間法制へと見直す必要があります」という点だ。個別労使自治の所で強調されているのは「過半数組合がある企業に限る」ということ。トヨタとかキャノンとか大企業の御用組合が支配する基幹産業を中心に中央突破を図ろうとしている。

 産業競争力会議 雇用・人材分科会主査(武田工業薬品代表取締役・経済同友会代表幹事)の長谷川閑史(やすちか)が提出した「資料5」はもっとわかりやすい。長谷川の主張がブルジョアジー全体の構想を明記していると言える。1、「働き方改革」の全体像と残された課題では「ジョブ型正社員の普及・拡大」「新しい労働時間制度の創設」「予見可能性の高い紛争解決シスチム」が中核となる政策であるとしている。「新しい労働時聞制度の創設」=「裁量労働などの既存労働時間制の見直し」であり「時間でなく成果で評価される働き方」という表現をしている。「予見可能性の高い紛争解決システム」とは「金銭救済システム・仲裁の仕組みの検討」ということである。解雇撤回・原職復帰というあり方を解体し、それに代わる金銭給付命令を出すシステムを構築するということである。その場合は解雇撤回・現職復帰のようなあり方を無くして、金銭解決しかありえないというところにもっていくあり方を作るということ。更に争議等を未然に防ぎ闘えなくするシステムの事を考えている。例えば、3ヶ月契約の有期労働契約を10回近く更新していれば、期限の定めのない労働契約と同じとみなされて雇い止め解雇は不当であるという裁判の判決や、労働委員会で命令が出ないために、あらかじめグリーンスタッフのように契約の更新は4回まで必ず最長5年で解雇が明記された就業規則をつくり、労働契約書にも明記しておけば雇い止め解雇をめぐる労使紛争等起きないはずだ。こういうことが予見できるシステムをつくれと言っているのだ。

 2は「改革の大前提として「働き過ぎ防止」「ブラック企業撲滅」のために、労働基準監督官を増員し、悪質な法令違反が確認された企業等の送検・公表の徹底や「定期的な産業医による面談の強化(特に自律的な働き方をする労働者に対して)」という点を強調している。しかしこれは死なない程度にうまくギリギリまで労働者をこき使うようにもっとうまくやれと言うことに過ぎない。国家をあげて総ブラック企業化しようとしているわけであり、「働きすぎ防止」にはならない。

 3の「新しい労働時間制度の考え方」のポイントは①業務遂行、労働時間等を自己管理し成果を出せる能力のある労働者に限定導入が原則②過半数組合を持つ企業に限定導入、労働条件は労使合意内容を労基署に届ける。③本人の希望・選択で出入り可能なオプト・イン(自発的に選択して出入りすること)の制度。「職務経験が浅い、定型・補助・現業的業務など自己裁量が低い業務に従事する社員は対象外」「中核的・専門的部門等の業務、一定の専門能力・実績がある人材、将来の幹部候補生や中核人材等が対象。」「量的上限規制を守れない恒常的長時間労働者、一定の成果がでない者は一般の労働管理時間制度に戻す」と但し書きをつけている。

 この仕組みそのものが成果主義・能力主義を前提にしていて「新しい労働時間制度」に入れる人間が将来の幹部候補性ということになっている。したがってこの導入部が競争と分断と過労死に至る狭き門となり、過労死するかもしくはそこからはじかれて一般労働者に格下げされるかのような仕組みが作られるということである。

 重大な問題は労働基準法を変えるとか、法改正ではなく、過半数で組織する労働組合を持つ企業の労使が労使合意で労基署に届ければ、その企業の一定の部門の労働については残業代がゼロにでき、完全な成果主義賃金にできるということだ。そういうシステムを作ると言っている。これは集団的自衛権を解釈改憲で行えるようにするのと共通していて、労基法を法文として変えないで労基法等を得て勝手に解体していくその突破口にしようとしているということだ。その意味でも集団的自衛権・戦争のできる国つくりと労基法解体・労働組合解体・産業報国会策動は一体のものなのだ。