『ディズガイド・エンプロイメント 名ばかり個人事業主』(脇田滋編著 学習の友社発行 2020年7月10日初版)を読んで

2020年8月7日 合同・一般労働組合全国協議会事務局長 小泉義秀

雇用類似の名ばかり個人事業主の存在と闘い

 「レーバーネットジャパンにジャーナリスト・北建一さんが書評を書いているけど読みましたか」というメールが東京西部ユニオンの大西執行委員から届いて本書の存在を知る。アマゾンで購入しようとしたが、アマゾンでは取り扱っていない。8月2日に八重洲ブックセンターへ買いに行ったが、ここでも扱っていない。青戸の弘文堂では取り寄せもできないと言われた。楽天ブックスでは購入できるようだが、そのあたりの内実はよくわからない。ISBNのバーコードはついているので書店で注文ができるのではないかと考えたが、扱っていないと言われるとどうしようもない。そこでやむなく「学習の友」社を調べてメールで注文を行うと、次の日に直ぐ本が届いた。メールでの返事は一切なく、いきなり届いたのでそっけない感じがする。本体価格1400円、プラス税、プラス送料で合計1700円超の料金がかかるが、読んでおくべき本だ。

ディスガイズ(disguise) は隠蔽・偽装という意味でDisguised Employmentは直訳すれば「偽装雇用」になるが、これは「雇用」と偽装するものではなく、逆に本来は雇用と扱わなければならないのにも関わらず、「個人請負」あるいは「個人事業主」扱いにしている偽りの「雇用形態」=「名ばかり個人事業主」「名目的自営業」と脇田滋は主張している。実際には会社や契約先の指示通りに働かせながら名目上「個人事業主」にすることで残業代未払いや団交拒否も合法化しようというのである。

二部構成の前半が当該の書いた「労働現場・働き方」

「第一部 名ばかり個人事業主」において①~⑫の現場労働者からのレポートが掲載されている。「①事故と隣あわせの料理配達、補償は仲間の切実な要求――アプリの指示で街中を走るウーバーイーツ ウーバーイーツユニオン委員長 前葉富雄」からはじまり、「⑫ 契約内容の一方的な不利益変更に泣かされる――インターネット通販出店者の従属性 楽天ユニオン代表 勝又勇輝」で終わる。

後半の第二部が脇田滋の「『雇用によらない働き方』に国際基準で立ち向かう」というタイトルがついた戦後労働法体系を解体させる安倍政権による「雇用によらない働かせ方」の労働法学者からの批判である。脇田滋は自身のホームページでもこの問題を警鐘乱打している。

1 のウーバーイーツユニオンが結成され、労働委員会で争っていることは、新聞報道で読んでいる。杉並で20代の青年が自動車事故で死亡したニュースを見たのは記憶に新しい。赤信号を無視して自転車を飛ばすウーバーイーツのカバンを背負った労働者を街角でよく見かけた。4月7日~5月末の緊急事態宣言の時は今よりも見かけることが多かった。この過程は需要が多いがゆえに、労働者間の競争も生じて、一人当たりの収入も激減したようである。

何故赤信号を無視してまでも急ぐかといえば、「事故を誘発しかねないインセンティブ制度」にあるという。「多くの配達回数をこなした人や、忙しい時間帯に配達する場合には、特別手当が出ます」(12頁)「回数をこなすためには、一回の配達にかかる時間を短くしなければなりませんから、高速で走るなどの無理をしてしまいます。『三日間で二〇回配達』でインセンティブがつく人が、一九回まで配達したけれど残り時間はわずかという場合、どうしても無理をしてしまうことはおわかりいただけるでしょう」(同13頁)とある。

ユニオンが結成された昨年10月に会社は「傷害見舞金制度」を立ち上げた。しかし、この制度は失業・退職と引き換えのペテン的制度だ。「見舞金を申請すると『会社に損害を与えた』ということで、今後仕事ができなくなってしまう」(同12頁)のだ。スマホでアカウントを登録して仕事を受けるのだが、見舞金を申請したらこのアカウントが取り消され、仕事ができなくなる。そのために見舞金を申請する人はほとんどいないそうである。

「社員が経費の赤字を会社に支払う給料日――丸八グループによる個人請負の実態 全労連・全国一般丸八真綿埼玉支部書記長 高橋正規」は②のケースであるがこれもすさまじい。

一言でいえば社員から降格されると、業務請負契約にされ、個人事業主として働かされる。会社は車のリース代から交通費、健康保険料などの支払いを一切しなくなり、経費の方が売り上げより多い場合は給料日に労働者が会社に金を払うことになる。

「赤字の給料とは、手数料より会社に払う経費の方が多くなる場合です。赤字が出れば会社から支給きれる給料はまったくないどころか、給与明細にはマイナスの支給額が書き込まれます」(同20頁)。「離婚など家庭崩壊、自分の家を失う人、自殺者まで出ました」(同21頁)

ここまでやられてはじめて労働者は労働組合を結成して闘いに立ち上がるのであるが……。

1と2の事例を簡単に紹介しただけであるが、こういう類の事例が12もある。どれも信じられないようなものばかりである。これが「雇用類似の働き方」の実態であり、こういう事例がどんどん増えているのである。

米国ではこういうこのような雇用類似の「雇用」形態が労働者の5割を占めるという。新自由主義の極致の雇用形態である。これと対決する労働運動が求められる。本書を読んでつくづくそう思う。