クレディセゾンの全従業員の「正社員」化とは何か?

クレディセゾンの全従業員の「正社員」化とは何か?

合同・一般労働組合全国協議会事務局長 小泉義秀 

「役割等級制度」という新たな分断・団結破壊・労働組合解体攻撃

8月14日、セゾンカードのクレディセゾンが、人事制度改革を発表した。9月16日から社員区分を撤廃し、アルバイトを除く全員を正社員として賃金・処遇を統一する「全社員共通人事制度」を実施するという。「セゾンが社員区分を撤廃し全員と正社員契約 無期雇用で福利厚生や賃金を統一し賞与も年2回 テレワークや短時間勤務など働き方改革も実施。」というのがニュースの見出しである。セゾンのサイトを見てみると確かに以下のように書かれている。
* 全員を無期雇用に
* 役割等級に基づく、同一労働同一賃金を実現(職能・職務等級は廃止)
* 全員に年2回賞与を支給
* 確定拠出年金制度等、福利厚生も統一

 また、人事制度における評価システムも一新。期待する役割や行動に応じて等級と処遇を決定する「役割等級」を導入し、短期的な成果だけでなく、等級ごとの役割に対する「行動評価」を行います。年齢や過去のキャリアにかかわらず、全員に同じ評価基準を適用することで、意欲があり活躍する社員が早期に難易度・期待度の高い役割につくことが可能になる。

 現行制度では、(1)無期雇用で賞与が支給される「総合職社員」のほか、(2)無期雇用だが賞与が支給されない、カード営業担当など「専門職社員」、(3)有期雇用かつ賞与なしの、プログラマーなど「嘱託社員」、(4)有期雇用で時給制の、パートタイマー扱いの「メイト社員」――などさまざまな区分が存在する。新制度ではこの区分を撤廃し、アルバイトを除く全従業員を「正社員」として雇用するというのである。
 また、新たな試みとして「役割等級制度」を導入する。求められる役割に応じて「G1~5」の等級を設け、高いパフォーマンスを発揮した社員は昇格・昇給するもので、モチベーションを喚起するための施策という。その他の新施策として、有給休暇を1時間単位で取得可能にするほか、最大2時間までの時短勤務、テレワークやフレックスタイムも導入し、柔軟性の高い働き方を可能にすると書かれている。
 この制度はこれまでに無い新な攻撃としてとらえる必要がある。有期労働契約が非正規のままで無期転換して正規と非正規の中間形態である、新たな無期転換の非正規(2018年4月1日以降の無期転換)攻撃。あるいは無期転換する前に雇い止め解雇にするための就業規則の改悪攻撃。そのことによる雇い止め解雇攻撃。これらの攻撃とも異なる、正規・非正規の労働者総体を一括して競争原理に叩き込む、原理的転換とでもいうべき恐るべき大攻撃だ。労働者を分断し、総体の賃金を引き下げる団結破壊、労働組合破壊の新手の攻撃とみるべきである。
この攻撃の環が「役割等級制度」の導入である。
 「役割等級制度」はこれまでの年功序列が前提の職能資格制度を完全に廃止し、完全成果給制度である。これが安倍の「働き方改革」の具体化であり、同一労働同一賃金の究極の形態といえる。
「役割等級制度」とは、管理職・非管理職に関わらず、労働者一人ひとりに企業が求める役割を設定し、その成果に応じて、等級を区別・序列化する等級制度である。ミッショングレード制とも呼ばれている。日本の雇用慣行である年功序列を完全に排除し、勤続年数や年齢、キャリアの有無に関係なく、役割の難易度や企業の期待度に対して、成果を出すことが求められる。高い成果を出せば、若手社員でも昇格・昇給を得られるが、「役割を果たしていない」と企業側に判断されれば、降格・降給もある。単に降格・降給というのではなく、自主退職を迫る制度であることは明らかだ。多くの労働者が精神疾患に追いこまれ、自殺者も増えるのが不可避の制度だ。
 勤続年数に応じた従来の職能資格制度であれば年功に応じたそれなりの年収が保障されていたはずだ。しかし「役割等級制度」はそういう従来の在り方をすべて破壊するのである。管理職だけでなく、全労働者がその対象となるのである。日本的経営の在り方ではなく、海外のグループ会社と「平等な評価体制を構築する手段として導入」すると言うのである。

職能資格制度・職務等級制度と「役割等級制度」の違い

 職能資格制度は職務遂行能力を評価の対象にしてきた。職務遂行能力は経験を積み重ねることによって、向上する考えられているため、勤続年数に応じて、等級が上がっていく設定になっていた。
役職等級制度ではキャリアや年齢に関係なく、与えられた役割の難易度や貢献度に応じて、賃金が決定される。そのため、成果を出せなかった従業員は降格・降給の対象となり、総人件費の抑制になるというのである。
 職務等級制度は、仕事を基準した等級制度の一つだ。賃金や一時金も仕事に基づいた職務給を採用している。成果主義や同一労働同一賃金を原則に等級が決定されており、主に専門性の高いスペシャリストの区分・序列化に導入されてきた。
 職能資格制度は、知識や経験など人を基準にした区分・序列する日本独自の等級制度だ。企業が求める職務遂行能力は、勤務する企業で効果を発揮するため、勤続年数に応じて向上すると考えられてきた。そのため、年功序列が前提とした人事評価が下され、年齢が上がるについて、昇格・昇給していく仕組みになっていた。
 役割等級制度は、上記の2つの等級制度とは明確な違いがある。職能資格制度は、同じ企業に長年勤務することで培われる職務遂行能力(人)を基準(能力基準)に区分・序列化する等級制度であり、職務等級制度は、職務(仕事)の難易度や期待度を基準に職務評価を行い、区分・序列化する等級制度だ。役割等級制度は、会社が求める役割(マネジメント能力や課題解決能力など)を基準に区分・序列化する等級制度である。
 「役割等級制度」をすでに導入している企業が「株式会社クボタ」である。株式会社クボタでは、役割と職務が異なる3つの職種それぞれにコースを設置し、人材育成・活用・処遇を決定している。管理職を対象にしたエキスパート職は、5等級に区分され、進級は業績貢献度が重視される。事務職一般職であるスタッフ職は、7等級に区分され、管理職同様に業績貢献度が進級の判断軸となる。(一部試験実施あり)。技術職であるテクニカル職は、11等級に区分され、業績貢献度や技能資格の習得、試験を基に進級を判断している。
 「キヤノン株式会社」では、年功序列を排除し、仕事の役割と成果に応じた役割等級制度を導入している。役割等級による基本給の決定、1年間の業績と業務プロセス・行動で年収を確定。一時金は個人の業績だけでなく、会社全体の業績も考慮される。役割等級制度は本社だけでなく、国内関連会社、アジアの生産拠点にも採用されている。
 キャノンの場合は「給与の昇給額・昇給率、賞与の原資・支給額などについては、キヤノン労働組合と年4回開催する委員会において、労使で定めたルールにのっとって支給されていることを確認し、その議事録を従業員全員に公開しています。また、賃金制度の運用や改善についても同委員会において労使で議論しています。」(キャノンホームページより)と書かれているように労働組合が資本と一体でこの制度導入の尖兵になっている。
 「サントリーホールディングス株式会社」は「チャレンジできる人が活躍できる人事制度」の構築を掲げ、マネージャー層を、これまでに培った経験を発揮する段階と定義し、役割と責任に基づいて、人事評価を下す役割等級制度を採用している。一方、組合員は成長段階と定義し、職能資格制度を採用している。
 サントリーは「約7割の社員(3,202人)が加入する『サントリー労働組合』と労働協約を結び、健全な労使関係を構築しています。人事・労務関連の諸制度の制定・改廃にかかわる協議をはじめ、人事考課制度に関わる協議会、ゆとり拡大に向けた委員会の開催など、労使一体となって社員が生き生き働ける環境づくりに努めています。例えば、人事考課に関する協議会では、マネジャーとメンバーで年4回実施する人事考課に関わる面接(年始の業務計画の設定、半期ごとの振り返り、人事考課結果のフィードバック)の後に、労働組合より全組合員対象にアンケートを実施し、その結果を労使で確認・必要に応じ都度対応することで考課制度の透明性、納得性をより一層高めることにつなげています。」(サントリーホームページより)とキャノンとほぼ同様の事が行われている。
 職能資格制度・職務等級制度も「同一労働同一賃金」論に基づく、分断支配、団結破壊の成果主義賃金制度である。役割等級制度は従来の制度と次元を画する究極の「同一労働同一賃金」に基づく新たな攻撃である。

「同一労働同一賃金」の究極の形態が役割等級制度

 「第4回 同一労働同一賃金の 実現に向けた検討会」(2016年5月24日 厚生労働省提出資料)において既に役割等級制度についての事例研究が提出されて、研究が行われている。今回のクレディセゾンの役割等級制度の導入はこの検討会の議論に踏まえてのものであり、軽視することはできない。クレディセゾンのG1~5の区分導入は、この検討会の提出資料に踏まえたものだ。厚生労働省提出資料)では例としてS1が部長であり「経営方針を踏まえて組織の運営方針を策定し、所管業務全体のマネジメントを行う」、S2「課長」は「上位方針を踏まえて組織の運営方針を策定し、所管業務全体のマネジメントを行う」…とあり課長補佐、主任、担当と5段階に分かれている。
 役割等級制度を導入している企業の例として「生産職」1級は「名人的技能及び判断を要する業務に加えて、部門の目標達成のための職場の指導的役割を担当する」とある。これは課長代理や係長の例であるが、こういう抽象的な役割等級をつけられて、毎年年収が変わるのである。G1評価が3、4に下げられたら自主退職に追い込まれるのは不可避だ。プロ野球の年棒制にランクが付けられたようなとんでもない制度である。これを労働組合と会社が一体で行うのである。
 この制度に加えて働き方改革の一環としてテレワークが導入される。最大2時間までの短時間勤務やフレックスタイムの導入がどういう「働き方」をもたらすかは予測できないほどに破壊的である。8時間労働制の解体、長時間労働が蔓延する。評価が下げられ自主退職に追い込まれた労働者がテレワークという形態の「業務請負」「一人親方」の雇用形態で新たに「契約」される可能性がある。テレワークは同一労働同一賃金の受け皿として考えられていることは明白だ。一人親方は個人事業主の形態をとり、労働者ではなくなるのである。雇用ではなく「契約」の形態だ。
 連合幹部打倒、御用組合幹部を打倒する闘いによって分断支配を打ち破り、階級的労働組合を職場に甦らそう!