労働者派遣法改正の問題点」講演2014/04/26

2014年4月26日 「4・26労働者総決起集会」(共催:JAM神奈川ジェコー労働組合、一般合同労組さいたまユニオン/協力:埼玉労組交流センター【東大宮コミュニティーセンター】)で開催された集会での講演内容です。

4・26さいたま―集会「労働者派遣法改正の問題点」講演録

合同・一般労働組合全国協議会事務局長 小泉義秀

1、全労働者を非正規化することを成長戦略の突破口とする安倍政権を打倒しよう

合同・一般労働組合全国協議会事務局長の小泉義秀と言います。普段は4・5トンのフォークリフトクランプに乗って古紙プレスの積み込み、荷卸し、はい積み・はい崩し、それに伴うシートかけ作業等をしています。私が全臨時労働者組合(略称全臨労)という合同労組に初めて加入したのが19歳の春ですのでその時からちょうど40年経ちました。全臨労は今でいう非正規職撤廃を理念として掲げていた合同労組ですので私は非正規職撤廃の闘いを40年続けてきたことになります。

40年合同労組の運動をやってきた経験が生きる場合と、逆にその経験が阻害物や桎梏になることもあります。私が合同労組を始めたときの全臨労発送毎日分会は2ヶ月の臨時雇用の連続更新であり、その賃金は机や椅子と同じ備品代として処理されていました。40年前以前から臨時労働者、今でいう非正規職問題はあったわけです。だから私の感覚も自分はこの道の先駆者であるという自負がありました。しかし、時代がどのように変わったのかを直視できたのかどうかというとそう簡単ではありませんでした。74~5年恐慌を転機に大恐慌情勢に突入し新自由主義が世界的な規模で労働者階級に襲い掛かってきたということ。米ではレーガンが管制官の組合を弾圧するために軍を投入する恫喝をかけて叩き潰す。英ではサッチャーが炭鉱の労働組合を叩き潰す。日本では中曽根による新自由主義の全労働者を非正規に叩き込むことになる総評解体、国鉄分割・民営化による大転換、大攻撃により労働者の非正規化の質が全く違うものに転換しました。そのことを理解しないと、合同労組の闘いも、派遣法・偽装請負、違法派遣との闘いも構築できないということです。その意味で派遣法改悪との闘いは国鉄分割・民営化との闘いが基軸に座らないと闘いきれないと思うということを最初に述べておきたいと思います。

もう1点最初に報告しておきたいことは、我が合同・一般労働組合全国協議会代表の労働組合、東京西部ユニオン鈴木コンクリート工業分会の吉本書記長、内尾分会長、鈴木会計の3名が雇い止め解雇になった件で解雇撤回を求めていた裁判の東京地裁の4月16日の判決で①解雇は不当であり、雇用関係にあることを確認する②解雇された以降の賃金を全部支払え③これから毎月20日にそれぞれ25万円程の賃金を支払え④これらの金については仮執行できる、という内容の判決を勝ち取りました。鈴コン分会は解雇されて5か月目から賃金の仮払いを勝ち取っているので最初の4ヶ月分の賃金をまとめて支払えという判決です。これからの賃金は2~3万高く解雇以前に得ていた賃金分を払わなければなりません。仮執行つきというのは会社が支払わなければ強制執行して払わせるという強制力を持ったものです。しかし、裁判は雇用関係の地位を確認するだけなので原職復帰がすぐに実現するわけではありません。この点については労働委員会と団体交渉、実力の職場の闘いで実現していくことになります。労働組合が団結して闘えば非正規の3ヶ月雇用の労働者の組合だって勝てるということを身をもって示した大勝利だと言えます。

さて本日の講演のタイトルは「労働者派遣法改正案の問題点」になっていますが、派遣法改悪を軸とした労働法制の全面改悪について話をしてほしいという主催者の依頼がありますので、派遣法以外の問題についても触れることにします。

皆さんはドラキュラの映画を見たことがありますか。牙があって人の生き血を吸って生きる吸血鬼の事です。これは作り話であるのは間違いありませんが、モデルがいます。マルクスの『資本論』第1巻、文庫本ですと第2分冊の最初の方に出てくる「ワラキアのボヤール」の一人で15世紀に実在したウラド3世がドラキュラ伯爵のモデルです。ウラド・ツベシュというのが本名であだ名がドラキュラとか。ワラキアは現在の南ルーマニアでボヤールというのはワラキアの大土地所有者の総称です。人間の生き血を吸うような収奪を行うボヤールの一人が吸血鬼・ドラキュラのモデルとなったらしいのです。

ヨーロッパでは賦役というがありました。領主の所でただ働きをして、あとは自分の土地で働いてその作物は自分のものという封建社会の収奪の方法です。半分はただ働き、半分は自分のものという収奪構造が一般的だったと思います。日本の封建社会では一般的には五公五民と言ってとれた作物の内半分を領主に年貢として納め、半分は自分の家族で食べる仕組みでした。いずれも自分と家族が働いたうちの半分を領主に収奪されていました。

封建社会が崩壊して資本主義がはじまったころ労働者はやはり自分の働いたうちの半分は資本家に搾取されていたことがマルクスの『資本論』の例からしてもわかります。しかし資本というのは制限を加えなければ無制限に労働者から搾取することを本質としているものなのです。『資本論』では児童労働や女性労働の実態が暴露されています。12歳から15歳までの児童を休みなしで30時間働かせていた件で告訴された工場主の話など。女性の深夜労働、児童労働の激化の中で資本の搾取の方法に制限を加えなければ労働者が種族として絶滅してしまう可能性があることと、労働者の闘いもあって工場法というのができます。イギリスの1850年の工場法は1日の平均的な労働時間を10時間に制限しています。これは日本でも同じで高野房太郎という人の書いた『明治日本労働通信』(岩波文庫 156頁)の「日本における工場法案」という項に「10歳未満の年少労働を禁止すること。15歳未満の子供の労働時間を10時間に制限すること。15歳未満の子供に対する夜間作業の禁止。特別の合意がない限り、成人に対する労働時間を12時間に制限すること…」ということが書いてあります。1897年のことです。今NHKの朝ドラで「花子とアン」をやっていますがそのモデルの村岡花子が4歳の明治30年のことです。ということは10歳未満の子供が工場で働き、15歳未満の子供が深夜労働や10時間以上の労働をしていたということです。成人の労働者も12時間以上の労働をしていたということです。「日本における女性労働」というところには「紡績産業に雇用されている職工数は5万4330人でそのうち9歳から40歳までの女性労働者で(工場はまた幼児の虐殺者です)…女工の多くは内陸部から期間3年から5年の契約で連れてこられ、会社所有の宿舎に費用は会社持ちで寝泊まりします(151~152頁)」とあります。花子の妹役の黒木華は製糸工場に働きに出ましたね。これも1897年の文書です。何年か前の日本経団連の経労委報告に「工場法以前に戻すべき」と書いてありました。工場法以前というのはドラキュラのモデルとなった「ワラキアのボヤール」の水準ではなく、人間の生き血を吸取り、人間を死ぬまで働かせて搾取できるようにしようということです。

「花子とアン」の第2回で地主が小作にこれからは小作量を引き上げ6俵しかとれない土地から4俵の小作料をとるという話が出てきましたがこれはすさまじい収奪です。資本主義に入ると封建時代以上の収奪が強行されるようになりました。

現在の労働基準法は戦前の工場法に踏まえ、更に戦前の工場法の種々の問題点を乗り越えるものとして憲法の団結権や生存権と一体のものとして戦後制定されました。

今安倍政権はこの工場法に由来する戦後に制定された労働基準法を全面的に解体して、10割の労働者を非正規に叩き込もうとしています。その突破口が国家戦略特区であり、派遣法の改悪であり、労働法制の全面改悪なのです。

政府の試算でも2110年には日本の人口はこのままいくと4280万人になると言われています。新自由主義は次世代の労働者を生み出してまた搾取する構造さえ破壊して、労働者を種族として絶滅させてしまう攻撃をかけてきているのです。

そしてこの全労働者を非正規化する転換点になったのが国鉄分割・民営化です。派遣法が1985年に制定され1986年7月1日に施行されたのは偶然ではありません。国鉄分割・民営化攻撃、外注化、派遣法、有期労働契約が労働者を非正規職に叩き込んできた大きな転換点です。したがってこれに対する反撃もここからはじまらなければなりません。

動労千葉は鉄建公団訴訟において2012年の6月29日の1審白石判決で動労千葉の組合員を採用者名簿に載せないという不当労働行為意思があったことを認めさせました。更に昨年9月25日の難波判決でも不当労働行為意思があったことをはっきりと認めさせました。しかし難波裁判長は解雇撤回を認めませんでした。不当労働行為は現状回復、すなわち解雇撤回が原則です。現在動労千葉は最高裁に上告して闘っています。6月8日の国鉄全国運動の集会までに何としても10万の署名を集めようと頑張っています。同時に動労千葉は外注化を許さず、外注化先の会社である千葉鉄道サービスの労働者をも組織化してJR本体と外注化先の労働者と一体となって非正規化を許さずに闘いぬいています。この闘い方の中に非正規職撤廃の新たな闘いの展望があります。

この件については最後にもう一度立ち戻ります。派遣法そのものを粉砕する闘いはこの動労千葉の外注化阻止、国鉄1047名の解雇撤回、国鉄分割・民営化体制そのものを粉砕する闘いの中にしかないからです。

2、国家戦略特区を突破口に全面的な労働法制改悪を目論む安倍政権

さて労働基準法6条は「何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」と定められています。戦前に多く見られた不当な中間搾取・ピンハネをしてきた親分的な労務供給事業や募集人制度等を取り締まるために労働基準法が制定する過程で労働者代表委員の強い要望で規定された条文です。職業安定法第44条も同様の趣旨で雇用関係への業者の介入は原則禁止されてきました。戦後40年もの間何故派遣法のような法律が禁止されてきたのかを良く考えなければなりません。労働者派遣法はこの基本原則をぶち壊したのです。私が20代の頃、赤羽駅で友人と待ち合わせをしているときに「お兄さん、8000円でどうだい」と声をかけられたことがあります。これが『手配師』です。「てはいし」は例えば10人の労働者を15万円で集めてくるよう元請けの企業から依頼されます。手配師は一人当たり7000円を自らの懐に入れて、10人で7万円の中間搾取・ピンハネを行います。派遣会社はこの手配師が会社組織になったようなものなのです。通常の賃労働と資本の関係における搾取とピンハネという二重の搾取を行うのが派遣労働という形態です。

1960年代後半に米国から日本に入ってきた派遣事業は1970年代になって秘書、受付・テレックスオペレーターなどの業務に拡大し「事務請負サービス」などと呼ばれました。これは事務労働に広がる「偽装請負」です。労働省は1979年になって初めて「職業安定法に違反する労働者供給事業が拡大している」との認識に立ち、調査に乗り出します。しかしこの偽装請負は事務業務に浸透していて、派遣法はこの違法を追認し合法化する形で制定されたのです。

労働者派遣法は1985年に成立、86年に施行されました。当初は秘書や添乗など専門的な13業種に限って認められていたのですが、96年に対象業務を26に拡大、99年には製造業を除いて対象が原則自由化されました。2004年には従来禁じられていた製造業にも1年を上限に派遣が解禁され、07年には上限は3年に延びました。2004年を前後して「日雇い派遣」「スポット派遣」が市場を凌駕し始めます。「常用雇用の代替にならない」「専門的職能を持った労働者を対象にするから派遣という仕組みでも劣悪な労働市場にならない」という立法時の方便は嘘であることが明らかになりました。製造業への派遣の解禁は、正規を非正規に置き換えると同時に、派遣労働者の賃金引き下げをもたらしました。

「専門26業務」と言われる業務も、ファイリングや事務機器操作など、もはや専門性があるとはいえない業務であり、建物清掃、案内・受付・駐車場管理、テレマーケティングなども含まれています。更に現実には26業務で派遣された労働者が他の仕事をやらされた例は山ほどあります。例えば「事務用機器操作」で赤十字血液センターに派遣された女性労働者が献血の受け付けや記念品の配布、献血バスの清掃の仕事をしていました。他にも事務用機器操作専門の派遣社員が在庫チェックや郵便物の発送、銀行の入金作業、お茶出し、弁当の買い出し等々も。専門業務の定義はあいまいで名ばかり専門職が放置されてきました。

また専門業務以外は派遣期間が3年以上になると企業に雇用義務が生じます。そのことを知った女性労働者が東京都労働局に相談すると、派遣会社は期間制限違反で指導を受けましたが、女性は逆に雇い止めになりました。実際に多くの工場で、派遣期間が来ると一時的に期間工として採用、その後派遣に戻して長期期間働かせるという脱法行為が繰り返されてきたのです。派遣先から中途解除された場合、登録型派遣では9割が失職しています。これら広範な業務で働く労働者を、何時でも首を切れ、いつまでも派遣で働かせることができるとすることなど、到底許されません。

3月27日に出版された『限界にっぽん』(朝日新聞経済部著 岩波書店)の6ページに以下のように書かれています。「電子部品工場で働いていたが、『二年一一ヶ月』で『雇い止め』にり、会社の借り上げアパートからも迫い出された。三年を超えて働いてもらう場合は、企業が直接雇わなければならないと法律で決められている。企業側はそれを嫌がり、非正規の派遣社員を三年未満で働かせるやり方が広がっている」。これは事実であり私たちの周りにも大勢います。本書は2012年8月から2013年11月まで朝日新聞で連載された「限界にっぽん」に大幅加筆して出版されたものです。「非正規社員が広がる契機は、九〇年代後半の『派遣の原則自由化』だった。正社員の終身雇用を柱にした『日本型経営』の限界が叫ばれていた。日本経営者団体連盟(今の経団違)が九五年、報告書『新時代の日本型経営』で非正規社員の活用を提案すると、規制緩和を求める声が強まった。専門職に限定されていた派遣が九九年、原則自由化され、小泉政権時代の〇四年には製造業にも解禁された。」(11頁)ともあります。95年の『新時代の日本型経営』が非正規化を推進する転機になったのは間違いありませんが、この前に国鉄分割・民営化攻撃が今日の非正規化攻撃の転換点であることから意識的に逃げています。「限界にっぽん」の追い出し部屋の話はまさに人材活用センターそのものだからです。その点について抑えておく必要があるかと思います。

消費税と非正規雇用の関係

4月から消費税が8%になり、来年10月には10%になることが予定されています。

『消費税のカラクリ』(斎藤貴男著 講談社新書 2010年7月20日第1刷)の著者斎藤貴男は消費税が10%になれば「失業率が10%、年間自殺者も5万人を超えるだろう」と述べています。日本の年間自殺者3万人という数字が2009年まで連続して続く発端が消費税が3%から5%に引き上げられた1997年の翌年からであることは偶然ではありません。消費税の滞納をとりたてられた中小零細業者がそれを理由に自殺しているケースがたくさんあります。今回の消費税増税でレジを買い替えられない新潟のスーパーが倒産したという記事が4月に入ってすぐ出ていました。消費税が10%に跳ね上がればそれが加速するのは火を見るより明らかです。さらに斎藤貴男は非正雇用増大の原因に消費税があると指摘しています。正社員に支払われる給与は消費税の「仕入税額控除」の対象になりませんが、派遣社員らへの報酬は控除の対象になります。つまり派遣労働者の割合を増やせば、その分消費税の納付額が減るのです。正社員を非正規に置き換えるのは人件費の削減が主たる目的ですが、消費税の納付節約にもなるのです。本書では派遣社員への切り替えで消費税納入額が7百万減らせた会社の例が登場します。さらに以下のような記述もあります。「ある大手の証券会社は消費税が導入される半年前、自社関連の人材派遣や管理事務の受託を主な業務とする子会社を設立し、7百人の社員を移籍させた。昨年には子会社を分社化している。この手続きによって、運用しだいでは証券会社は年間数億円の消費税を節約できる計算になる」(同122頁)「消費税法には資本金が1千万に満たない法人は、設立後の2年間は売上高の如何にかかわらず納税を免除される規定がある」(同116頁)ため、派遣子会社の設立・閉鎖、また設立という目まぐるしく繰り返される手法が続くのです。だから消費税の増税は派遣労働者などの非正規雇用を拡大し、失業者増大させることになるのです。

レジュメの資料に添付した、2013年10月24日付けの東京新聞の記事はわかりやすく図入りで説明しています。齋藤貴男の述べていることと同じです。

派遣労働者を3年で首にする改悪

「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研修会」(厚生労働省)は昨年8月6日に報告書を発表しました。この報告書に沿って3月11日に派遣法改悪案が閣議決定され通常国会に提出されました。この報告書について報じる2013年9月13日付け東京新聞の見出しは核心をついた衝撃的なものでした。「国家的な大リストラ 派遣全業種で開放!?」「東京五輪15万人雇用創出は非正規だけ」「新3年ルール失職助長」「労働者保護なし企業より政策」「3年後に正社員化 罰則なければ無理」。この派遣法の改悪案の核心は以下の点です。現在の派遣労働は、原則として最長3年で派遣業務が打ち切りになりますが、通訳や秘書など「専門26業務」に限っては打ち切り期間がありません。改悪案では、この「専門26業務」という区分を撤廃し、あらゆる業務で派遣社員が継続して働けるようにするといいます。その代わりに一人が同じ職場で働ける期間を最長3年とする「新3年ルール」が導入されます。つまり派遣元の会社は3年ごとに継続して派遣労働者を派遣し続けることができますが、派遣労働者は3年で解雇になるか別の職場に移らなければなりません。厚生労働省の資料によれば現在の派遣労働者は約130万人。内26業種の派遣労働者はそのうちの半分の64万人。これまでは無期で働いてきた64万人の派遣労働者が3年で解雇か、別の職場に移らなくてはならないのです。派遣元と期限の定めのない契約をしている派遣労働者はこれまでと同様期限の定めなく雇用されますが、期限の定めのない派遣労働者は2割程度で、あとは26業種の派遣労働者も半年とか1年の有期雇用が多いため3年で解雇される可能性が高いのです。有期の派遣労働者は3年で首になり、企業は別の派遣労働者を永続的に派遣できるというとんでもない改悪なのです。

これも資料に入れておきましたが、1月29日付けの日本経済新聞には「働き手個人の雇用を安定させたり、待遇を良くしたりするため、派遣元の人材派遣会社に対して責任を重くした。派遣元に労働者の教育訓練を義務付けたほか、3年の期間が終わった労働者に対し①派遣先企業に直接雇用を申し入れる②新たに派遣先を提供する③最終的な受け皿として自社で無期雇用する―措置を求める。派遣先へのチェックも厳しくする。現在届け出制と許可制の2種類がある事業者について、基準が厳しい許可制に15年春から一本化する。許可基準は2000万円以上の純資産保有など。届け出で済ませていた事業者の事業所は5万か所あるが、今後は撤退が相次ぐ可能性が高い」と書いてありました。①~③までのことが嘘とペテン、改悪をスムーズにするための方便にすぎないことは派遣労働をやったことのある人ならすぐわかると思います。こういうのはあり得ません。許可基準が厳しくなり撤退する会社が増えるのは事実だと思います。しかしこれは派遣労働が少なくなるということではなく、大手を中心に派遣業が再編強化されることに他なりません。手配師のような事務所と電話と机を置いた乱造派遣会社は淘汰されるかもしれませんが、逆に大手の派遣会社が現在の産業構造の中に不可欠な存在として位置付けられる、派遣労働というあり方を強化する改悪に他なりません。

今一つのポイントは「派遣先の労働者側と使用者側の合意を前提に」といている点です。御用組合・体制内の労働者支配と一体で計画されている点が特徴です。

●有期労働契約の無期転換を10年に

厚生労働省は2月14日、非正規労働者など働く期間が区切られた「有期雇用」の労働者の契約期間を5年から最長10年に延ばす方針を明らかにしました。関連法案を今国会に出し、成立を目指すとのこと。派遣法改悪案と同様2015年4月1日の施行を目指しています。定年後の高齢者について5年の有期雇用の後に、有期の契約を更新して雇えるようにする規定も盛り込んでいます。

現行法では企業が有期雇用の労働者を5年間同じ職場で雇用した場合、本人が希望すれば無期雇用に変えなければいけません。マスコミ報道では「弁護士や公認会計士など年収1075万円以上の収入の高い専門職に限って適用する。新しい法律には企業が一部の人材に関して有期雇用の労働者を雇いやすくする措置を入れる。例えば今の制度に基づく有期雇用なら5年後の19年までしか働けないが、新法の成立後は今から6年後の20年の東京五輪に向けたプロジェクトでも有期雇用で働けるようになる」と言われています。この無期転換ルールは2012年8月に成立し、2013年4月1日に施行されたばかりの法律です。これをもう変えようというのです。この法律の施行以降5年で必ず雇い止めにするように就業規則が改悪されるなど、JRのグリーンスタッフ型の有期労働契約が進んでいます。そのような改悪を先行させた後で追い打ちをかけるように無期転換ルールを10年にする法律の成立が目論まれているのです。

●国家戦略特区攻撃

1月7日の規制改革会議に「国家戦略特区の進め方について」という資料が提出されました。ここには以下のように書かれています「国戦略特区の制度の主眼は、…やる気のある人・企業・自治体が主体となって『岩盤規制』を突破する先行モデルを実現」すると。「岩盤規制」というのは公務員労働運動であり、簡単には首にできない公務員身分を民営化・外注化で突き崩すということに他なりません。国家戦略特区の区域会議を3月に指定し、「4月には直ちに立ち上げる」と書かれています。「東京オリンピックも視野に、2020年睨んだ中期目標を早急に議論すべき」「まずは、今後2年間を集中期間として、残された岩盤規制について、少なくとも特区で突破口を開くこととすべき」と。

3月28日に提出された国家戦略特区の資料には東京23区、大阪、新潟、兵庫の養父市、沖縄県などが列記され、それぞれどのようなことを特区でやるのかが具体的に示され始めました。

●地公法改悪攻撃

3月7日に地方公務員法等の「改悪案」の閣議決定がなされました。4月11日にはもう衆院を通過し、参院に回っています。この「改悪案」は①能力主義の任用制度②人事評価制度の導入③分限事由の明確化・分限免職の全面化④等級別基準職務票による職員数の公表というものです。この攻撃は地公法そのものの解体であり、戦後の公務員制度・人事院制度の解体攻撃です。戦後労働法制解体、改憲攻撃そのものであり、岩盤突破の攻撃です。

●限定正社員制度の本格的導入

郵政とユニクロの限定正社員制度導入が進められています。これは正規を非正規に転換していくためのとんでもない攻撃です。

●「労働時間法制の見直し」

中小企業に猶予されてきた月60時間超の時間外割増賃金率(50㌫以上)について、経営側は「猶子」ではなく「適用除外」すべき。割増を増やしても残業時間は減らないので割増賃金率からの適用除外を要求しています。

「労働時間の量的上限、勤務間インターバル(休息)」については、日本の企業の商慣行として顧客の要望に応えて時間外労働に協力していただく実態があるから、24時間の内11時間のインターバルを必ず入れるという一律規制は現場になじまないとしています。小竹運輸グループの過労死問題で明らかになっているのは、22時とか23時まで残業をやってまた次の日の早朝の4時とか5時に出勤するようなインターバルが6~7時間しかないような形態では体が休まらないで過労死する危険があるということです。だからこのインターバルを11時間以上確保すべきとの労働側の意見に対し経営側が反対しているということです。

4月22日の経済財政諮問会議と産業競争力会議との合同会議で安倍は「時間ではなく成果で評価される働き方にふさわしい、新たな労働時間制度の仕組みを検討してほしい」という指示を出しました。有限会社アイズプラス代表の池照佳代などの会社社長が、労働時間ではなく裁量労働制、ホワイトカラー・エグゼンプションを導入するよう述べて、安倍がそれに対して答えたのです。

4月24日の東京新聞に次のように書いてあります。「報酬につながらない残業を強い、成果が出るまで際限なく働かせる。そんな『ブラック企業』を助長するような労働法制の改悪案である。…長時間労働が背景にある過労死や過労自死、うつ病などの『心の病』が社会問題化する中で、時代に逆行するものである。」

裁量労働制について経営者側は、営業とか研究職の場合時間では計れない仕事だから、8時間労働制の規制から除外すべきだというのです。研究開発の場合、例えば1日4時間でアイデアが生まれることもあるから4時間労働で8時間の仕事をしたことにしようというのが裁量労働制の主張ですが、そんなことは現実にはあり得なく、1日12時間働いても14時間働いてもアイデアや研究開発が進まない場合は8時しか働かなかったことにして時間外手当もつけないし、週100時間働いても40時間とみなすということにするための方便として出されているのが裁量労働制です。8時間労働制を解体し、休日・休暇の概念も含めて全部破壊しようとする攻撃に他なりません。

一般社団法人電子情報技術産業協会は労基法41条の労働時間、休憩休日の適用除外の範囲をホワイトカラー層にも拡大して「その運用は各企業の労使自治に委ねる仕組みとするよう要望する」と提案しています。労基法41条の適用除外になっている産業や職種がいくつかあります。例えば農業・畜産・水産業、職業としては秘書、管理監督者、断続的に労働するもの。こういう労働について労基法の労働時間や休憩休日の適用除外になっています。これをホワイトカラーにも拡大しろと主張しているのです。特徴的なことは法律で決めるのではなく、「労使自治」を前面に出して労使で決めて、労基署に届ければ労基法の41条の適用除外や、ホワイトカラー・エグゼンプション制度を自由にできるようにしようとしているということです。労働組合の屈服が前提になった労使自治だということです。

以上の例は労働法制改悪の部分にすぎません。あらゆる側面から労働基準法が全面的に解体されようとしています。こういう形であらゆる側面から「工場法以前に戻せ」という攻撃がかけられているのです。

●研修生・実習生制度の3年から5年への延長を画策

現行研修生・実習生制度は3年が上限ですが、これを5年にするという法改正を画策しています。これは奴隷労働であると国連からも非難されている制度です。法が成立し、来年施行されるとするとちょうど2020年が5年の期限です。建設労働者が足りないから外国人研修生・実習生を使おうというのです。そしてこれは特別措置法の形で5年経ったら終了すると思います。オリンピックのためだけに延長してあとはお払い箱にするつもりです。合同・一般労働組合全国協議会のホームページの、資料欄・学習欄というコーナーがあり、その中に私が書いた「外国人研修生・実習生制度の即時廃止を」という文章が掲載されていますので関心のある方は読んでください。

3、偽装請負を合法化する動き―派遣法そのものを葬りさる非正規職撤廃の闘いを

今日の集会は新たな段階に突入したジェコー・ショーワの闘いと一体の非正規職撤廃のためのものだと思いますのでジェコー・ショーワの裁判と労働委員会命令について偽装請負問題と派遣法の問題に関連して少し触れたいと思います。

「参考1」~5は昨年8月6日の「派遣法のあり方研究会」出された資料です。労働者派遣というのは「派遣元が自己の雇用する労働者を他人の指揮命令下に派遣し、派遣先のための労働に従事させること。労働者は派遣元に雇用され、派遣先で使用される。派遣元、派遣先は労働者派遣法の規制に従わなければならない」のです。請負というのは「受注者が発注者(メーカー)に依頼された仕事を完成させ、その結果を引き渡して報酬を得ること(民法632条)。労働者は受注者に雇用され、受注者の指揮命令で働く。労働者が発注者に使用されることは無い。受注者は発注者から独立して仕事をこなす」これが請負労働です。労働者は請負業者に雇われていますが、発注者から直接指揮命令を受けて仕事をしている場合は偽装請負になります。実態は労働者派遣に該当するのが偽装請負なのです。この資料で怒りに絶えないのは「参考2」の『偽装請負』(法的には労働者派遣法に該当)と書かれていることです。この点については何故かということを後で述べます。

では何故偽装請負や違法派遣が禁止されているのでしょうか。通常の労働者は労働基準法や労働安全衛生法によって守られています。企業はこれらの法律によってさまざまな義務が課せられています。しかし、偽装請負の場合はそういう必要は一切ありません。請負会社がするのは人を集めるだけで、あとはメーカーに送り込み細かい作業の指示はメーカーが出します。こうしてメーカーは雇用の義務や安全の責任を負わないで請負労働者を手足のように使って低コストで自社製品を作ることができます。そうして必要がなくなればいつでも使い捨てにするのです。メーカーと労働者の間には雇用関係はないので簡単なことなのです。労災事故がおきても責任は請負会社が負うことになります。安全は崩壊し、事故死・過労死が多発します。このような偽装請負を容認したら企業は好き勝手にこれを使って労働者を際限なく搾取していくことになります。だから禁止されてきたのです。しかし現在この偽装請負を合法化しようという動きが出てきています。松下プラズマディスプレイ事件の最高裁判決がそれです。ジェコーの2013年1月7日さいたま地方裁判所熊谷支部判決も松下プラズマディスプレイ事件の最高裁判決判例の枠組で下された反動判決でした。端的にいえば偽装請負を容認し、偽装請負は実は労働者派遣法の枠内であるから合法だという、従来の派遣労働をめぐる裁判の枠組みを全面的にひっくり返す内容となっています。先の偽装請負も労働者派遣に該当というのはこの最高裁判決を踏まえてのことです。

労働者派遣法が施行される前は偽装請負であると認められた場合、要するに下請け会社が下請け会社として請負労働をしていないと認められた場合は親会社と下請け労働者の間は「黙示の労働契約」が成立しているという判決が続きました。これらの裁判例に共通しているのは、採用、賃金、時間管理、作業についての指揮命令などの事実認定を通じて現実の使用従属関係の存在を検討し、労働契約成立を認定しようとしていることです。労働者派遣法施行後も偽装請負である場合は、親会社、下請け会社、下請け労働者の三者の関係が、親会社と下請け労働者の二者関係になり、その両者の間に「黙示の労働契約」が成立していると判断するということです。違法派遣の場合は、派遣先と派遣元と派遣労働者という三者の関係が、派遣先が派遣労働者を直接雇用しなければならない二者関係になるということです。

この論理はジェコー裁判、松下プラズマディスプレイ事件とも共通しています。契約関係は①業務請負契約であった。②しかし、その実態は請負労働とは言えない偽装請負または違法派遣である。現実に労働局から指導・勧告を受けて業務請負ではなく、違法派遣ではない状態の労働者派遣に切り替えている。③そうするとそれまでの雇用関係である、偽装請負または違法派遣状態の雇用関係は、派遣元・派遣先・派遣労働者、または、請負元、請負先、請負労働者の三者関係ではなく、派遣先と派遣労働者、請負先と請負労働者の二者間の関係に戻ることになる。いわゆる偽装請負、違法派遣ははじめから,「公序良俗に反するものであるから無効であった。」。したがって、ジェコーの場合でいえば日研と当該労働者の雇用関係は無効であり、実質的な雇用関係にあったのは当該労働者とジェコーとの二者関係になります。したがって「黙示の労働契約」が成立していたと我々は主張してきたのです。

上記を前提にして、偽装請負が明らかになり、さいたま労働局の指導の下で期間工として直接雇用され、雇い止め解雇されましたが、偽装請負状態の雇用関係は無効であり、その間はジェコーとの間に期限の定めのない「黙示の労働契約」が成立していました。高橋さんらの休みは7年間の深夜勤によるものであり、労災認定されるべきものでその責任はジェコーにあり、雇い止め解雇は不当であり、撤回しろという論理構造が原告の主張です。ジェコーの判決文は偽装請負であることを認めています。それは同時に違法派遣でもあるのです。にもかかわらず、判決は労働者派遣法に該当する以上派遣労働であると述べているのです。では違法派遣や偽装請負はどうなるのでしょうか。こんなむちゃくちゃな論理はありません。しかし、それを可能にしたのが松下プラズマディスプレイ事件の最高裁判決なのです。

当該の吉岡さんが働いていた時期の2004年1月時点では製造業への派遣は禁止されていました。更にこの形態は偽装請負でした。高裁はそれを認めたのです。最高裁も請負労働ではない、偽装請負であるということを認めています。しかも会社は労働者派遣法に基づく雇用関係であるとの立証はしませんでした。すると派遣法に違反した派遣労働をしていたことになります。これまでの判例ではその契約関係は無効であり、黙示の労働契約関係が会社と当該労働者の間に結ばれていたことになるのです。高裁判決はそういう立場で判断しています。しかし最高裁は「労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても,特段の事情のない限り,そのことだけによっては派遣労働者と派遣元との間の雇用契約が無効になることはないと解すべき」と述べているのです。しかもそれを派遣労働者の保護を理由にしているのが卑劣です。さらに製造業への派遣が禁止されていた点については一言も触れていません。違法であっても契約は無効でないというのです。これは偽装請負や偽装派遣を容認して、「職業業安定法4条6項の労者供給には該当せず,これを禁止する同法4 4条にも抵触しない」とした歴史的極反動判決であり、ジェコーの判決はこの枠組みで下されたものです。ショーワの中労委命令とも併せて考えると、偽装請負・違法派遣を容認して、戦後確立してきた職安法による労働者供給事業を原則禁止して、例外的に認めた派遣法の下での派遣労働の在り方の縛りを解体して、偽装請負・違法派遣を容認する舵を切った判決と言えます。しかし吉岡さんが切り開いた高裁判決は偉大な勝利でした。私は派遣法の問題点を全面的に暴き出したという意味で画期的な判決だと思います。だから最高裁は政治的極反動判決を出したのです。派遣法との闘いはジェコー・ショーワのように裁判闘争や労働委員会で敗北してももう一度中から再組織して闘って派遣法・偽装請負許さない闘いをやることを通してこれまでの全部の闘いを生かし、派遣法そのものを葬りさることができると思います。

動労千葉の千葉鉄道サービス(CTS)への出向攻撃や外注化攻撃は、JRにおいて偽装請負を行うこと一体です。動労千葉の闘いが偽装請負を暴いて闘うことによってその実態が明らかにされているのです。沖縄のJIBM労組にかけられている雇い止め解雇攻撃も同様です。沖縄のIJBS労組では書記長の仲宗根君が3月31日で雇い止め解雇になりました。この会社は日本IBMの100%の子会社です。この会社は「日生あいおい同和損保」という保険会社の苦情や契約内容の変更を受けつけるコールセンター業務を行っています。外注・委託と言ってもコールセンター業務だけを保険会社の本体業務と切り離して丸投げすることは不可能なのです。したがって必ず偽装請負になります。この隠蔽のために労働者を派遣という形態で雇用しているのです。誰も何も言わなければIJBSから「日生あいおい同和損保」に派遣しているように見えるのですが、実際には業務全体をIJBSが受託しているのです。偽装請負を派遣で押し通しているということです。

沖縄は国家戦略特区に指定されています。外注化先で闘いをやらせない、労働組合の闘いをつぶす攻撃として先取り的に労組の書記長に雇い止め解雇攻撃が襲い掛かったのです。JIBM労組は動労千葉のように闘おうと解雇撤回の闘いを開始しました。

こういう攻撃に対して動労千葉のように偽装請負を暴露し、外注化先の労働者をも組織化して闘うことが非正規職撤廃の道なのです。今日の非正規化・外注化は国鉄分割・民営化から始まりました。しかしこの国鉄分割・民営化体制は崩壊し始めています。それは新自由主義そのものが崩壊を開始したことに他なりません。この闘いを軸に闘う労働組合を甦らせる闘いが国鉄闘争全国運動です。韓国民主労総の鉄道労組は民営化反対のストライキを闘いぬいて、新たに国際局をつくり動労千葉との連帯を求めています。動労千葉27年の国鉄分割・民営化の闘いが世界の民主労総の闘いと結びついて国際連帯の地平が切り開かれているのです。

東京では八王子西郵便局で正規の職員がロックアウト型解雇攻撃を受けながら断固として闘いぬいています。小竹運輸グループ労働組合においても支援共闘会議を立ち上げ、いくつもの裁判闘争を闘いぬき解雇撤回闘争を闘いぬいています。鈴コン闘争は16日に勝利判決が出され新たな段階に入りました。ジェコー・ショーワの仲間の皆さん、さいたまユニオンの仲間とともに全国協は全国で組織拡大強化を実現して階級的労働運動を甦らせるために闘いぬきます。以上。

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合同・一般労組全国協議会