非正規職・派遣労働者問題と闘い

非正規職・派遣労働者問題と闘い 2010/11(理念交流)

東京東部地域合同労働組合東部ユニオン委員長 合同・一般労組全国協議会事務局長 小泉義秀

東京東部ユニオン委員長の小泉と言います。本年8月に新たに結成された合同・一般労組全国協議会の事務局長です。1974年~1985年、19~30歳までは「全臨時労働者組合」という、今日的に言えば非正規職撤廃を理念として掲げた合同労組で闘っていて、後半の5年は委員長をしていました。今日の私の持ち時間は通訳含め30分ということですので、用意した文書を全部読んだり、説明することはできません。ポイントだけ話します。
最初に一番後ろのページに添付した参考資料の説明をします。非正規雇用を生み出した典型的法律が派遣法ですが、国鉄分割・民営化をテコとして、戦後労働法制改悪が進行してきました。それら全部が一体となって非正規雇用を促進してきました。 1985年の派遣法と同時に制定された男女雇用機会均等法は男女平等をうたい文句にしながらそれまでは例外的にしか認められていなかった女性の深夜労働を全面解禁しました。
1995年の労働問題研究会報告は正規職は1割で良い、9割の労働者を非正規化するという宣言でした。2001年の商法の改正による「会社分割法」は分社化を容易にし、労働者を転籍させてその後労働条件を引き下げる手法で、民営化・外注化・分社化を促進させてきた法律です。ホワイトカラーエグゼンブションは年収の高いホワイトカラーに限り8時間労働の規制を取り払うという法律ですがこれは棚上げになったままです。
2008年の労働契約法は労働組合による団体交渉による解決でなく、個人と資本との個別契約関係に労使関係を切り縮め、資本が労働者を解雇した場合、解雇撤回・原職復帰ではなく、金銭で処理するしかなくなるような法律解釈に道をひらいた法律です。
これら非正規雇用を促進する法律は労働組合が闘わないことよって進められてきたといえます。しかし他方、動労千葉を先頭とする国鉄1047名の解雇撤回闘争が、民営化・非正規化の急速な全体化を阻んできたのです。

はじめに

【1】「もともと労働者派遣というのは、ごく一部の特殊な技術力をもった労働者以外は禁じられていた。普通の労働者に拡大すると、今のように労働者を徹底的に低賃金でこきつかうことになってしまう。だから、労働者派遣法という法律は、ごく一部の職種に限られていた。例えば製造業、自動車や電機の組み立ては禁じられていた。港湾労働者もそうだ。ピンハネが起こるからだ。これは労働者派遣法で何よりも禁じられていた。ところがここ10年くらいで派遣法が次々に改悪され、製造業務への派遣も04年から可能になった。それまでも“偽装請負”という形で、事実上の派遣が行われてきたが、全面解禁になったわけだ」(新版『甦る労働組合』中野洋著27~8頁)

【2】「工場法」以来の労働法は国家による法的強制によって制限しなければ資本の略奪力は「国民の生命力の根源を侵す」程に無制限なものだからだ。そうしないと資本は労働者を絶滅させてしまいかねない。工場法は、労働者の闘いが勝ち取ったという側面と、労働者の闘いを資本主義の枠内に抑え込む「くびき」の役割を果たしてきた。

【3】労働基準法6条は「何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」と定められている。戦前に多く見られた不当な中間搾取・ピンハネをしてきた親分的な労務供給事業や募集人制度等を取り締まるために労働基準法を制定する過程で労働者代表委員の強い要望で規定された条文である。職業安定法第44条も同様の趣旨で雇用関係への業者の介入は原則禁止されてきた。戦後40年もの間何故派遣法のような法律が禁止されてきたのかを良く考えなければならない。労働者派遣法はこの基本原則をぶち壊したのである。労働者派遣法は戦後労働法を根底から破壊するものだ。私が20代の頃、赤羽駅で友人と待ち合わせをしているときに「お兄さん、○千円でどうだい」と声をかけられたことがある。これが『手配師』だ。「てはいし」は例えば10人の労働者を15万円で集めてくるよう元請けの企業から依頼される。手配師は一人当たり7000円を自らの懐に入れて、10人で7万円の中間搾取・ピンハネを行う。手配師がヤクザである場合も多々ある。派遣会社はこの手配師が会社組織になったようなものなのだ。通常の賃労働と資本の関係における搾取とピンハネという二重の搾取を行うのが派遣労働という形態である。

【4】労働者派遣法「改正案」は先の通常国会に提出されたが、継続審議になり、10月の臨時国会で審議される予定である。閣議決定直前に問題となったのは、厚労省案にあった「事前面接の禁止の解禁」である。社民党党首の福島瑞穂が『解禁』に反対したため厚労省は案からこの部分を削除した。この削除については労使合意で決めたものを閣議でひっくり返したのは許せないという論調で「連合・財界共に不快感」と商業新聞で報道された。派遣企業による事前面接は派遣労働が自由化された1999年に禁止されている。派遣先企業が容姿や年齢で差別して採用をより好みしないようにするための禁止条項である。しかしこの禁止条項には罰則がないため、現実には事前面接は一般に行われてきた。派遣法は「抜け穴」がいくらでもあり、事前面接解禁問題は派遣法の根幹にかかわる問題ではないということを指摘しておきたい。派遣法は全面的に撤廃する以外にない。派遣法が存在する限り、非正規雇用はなくならない。派遣法撤廃=非正規職撤廃=資本主義社会の廃絶である。

【5】「だから『非正規職闘争』というのは、非正規職の労働条件を改善することだけを言うのでなく、非正規職を正規職化することだけに限られるわけではない。非正規職を作りだしたこの社会を作り直すことこそ真の『非正規職闘争』だ。この闘いをとおして共同で残さなければならないのは『労働者の階級性』だ」(『熊たちの434日 終わっていないニューコア労働者の闘争(抄訳)』(クォン・ミジョン編著)15頁)

【6】「非正規職が存在するのはやむを得ないと考えてしまったら、非正規職の処遇改善に関心が向かうほかない。資本の利潤獲得を当然のものとして認めてしまったら、結局労働者に対する最少費用という考え方を認めざるを得なくなる」「非正規職問題のゴールは『正規職化』ではなく、構造調整を粉砕し、資本主義を変えることであり、自由主義反対闘争の主体をつくることである」(16頁)という一節は教訓的である。

【7】日本においても連合・全労連・全労協をはじめ非正規職の処遇改善、「非正規職を正規職に」というスローガンを掲げる労働組合は存在する。自治労も非正規職労働者を組織して処遇改善の闘いを行ってもいる。しかし、前記クォン・ミジョンさんの文章を引用するならば、“非正規職の存在をやむを得ないものとしての処遇改善”であったり、“資本の利潤獲得を当然のものとして認めた”上での組織化であるから、それは非正規職を容認したうえでの、取り込み・抱え込みでしかない。彼らは資本と一体となりセーフティネットが必要だともいう。しかしセーフティネット論は解雇・リストラ、外注化、非正規化拡大が前提になっている。解雇され、リストラされて落下してくる人を網で救おうというのがセーフティネット論だ。重要なことは解雇・リストラ、非正規化・外注化を許さない闘いだ。動労千葉のように国鉄1047名の解雇撤回を貫き、外注化、さらなる民営化を許さない闘いこそが必要なのだ。この闘いと一体のものとして非正規職撤廃、派遣法撤廃の闘いがある。

【8】労働者派遣法改正案について「今歴史上初めて規制が加えられようとしている。このことは運動の成果であると評価すべき」との意見がある。しかし、改正案の内容は、登録型派遣、製造業派遣の「原則禁止」どころか、横行する派遣切りを合法化し追認するものでしかない。派遣法改悪は国鉄1047名の解雇撤回闘争を破壊しようとした「4・9政治和解」と一体であり、新自由主義攻撃そのものだ。違法派遣・派遣法の脱法化の実態を合法化して、資本の直接のむきだしの支配を持ってこようとするものである。しかしそれはまたその支配に対する労働者の闘いを激化させるのである。

違法派遣を合法化する法案

【9】改正案=答申は第一に、製造業派遣を原則禁止としつつ、「常用雇用の労働者派遣」を例外としている。しかし、「常用雇用」の定義は現行法では不明確であり、日雇い派遣でも、1年を超えて雇用されれば「常用雇用」になる。いわゆる「常用型派遣」で派遣元と期間の定めのない労働契約を締結しているのは、43%に過ぎず、多くは「6か月以上1年未満」の有期契約ですある。派遣切りの大半は、生産調整を理由とする中途契約解除に伴う解雇だ。期間の定めのない「常用型派遣」の労働者ですら、その7割が派遣先との契約を打ち切られ場合には、派遣会社からも解雇されている。答申は、この現実を容認し、合法化するものでしかない。さらに答申は常用型の定義としては、派遣会社から見て「1年を超える雇用の見込み」があればいいとされている。仮に製造工場へ送られた派遣社員が、派遣契約の解除と同時に派遣会社から解雇されたとしても、会社側は「見込み違い」を主張すれば、理屈上は製造業派遣の違法性を問われることはない。明白な「抜け穴」だ。

【10】第二に、登録型派遣は、専門26業務は「雇用の安定等の観点から問題が少ない」として例外としている。「専門26業務」の過半を占めるのは、ファイリングや事務機器操作など、もはや専門性があるとはいえない業務であり、建物清掃、案内・受付・駐車場管理、テレマーケティングなども含まれている。更に現実には26業務で派遣された労働者が他の仕事をやらされた例は山ほどある。例えば「事務用機器操作」で赤十字血液センターに派遣された女性労働者が献血の受け付けや記念品の配布、献血バスの清掃の仕事をやらされた。他にも事務用機器操作専門の派遣社員が在庫チェックや郵便物の発送、銀行の入金作業、お茶出し、弁当の買い出し等々も。専門業務の定義はあいまいで名ばかり専門職が放置されてきたが、答申はそれを追認して例外としたのだ。

【11】また専門業務以外は派遣期間が3年以上になると企業に雇用義務が生じる。そのことを知った女性労働者が東京都労働局に相談すると、派遣会社は期間制限違反で指導を受けたが、女性は逆に雇い止めになった例がある。実際に多くの工場で、派遣期間が来ると一時的に期間工として採用、その後派遣に戻して長期期間働かせるという脱法行為が繰り返されてきた。今国会で派遣法が改悪されることを見越して、同様のことが多くの工場で起きている。派遣法は企業に都合よく作られた法律であるということだ。

【12】派遣先から中途解除された場合、登録型派遣では9割が失職している。これら広範な業務で働く労働者を、何時でも首を切れ、いつまでも派遣で働かせることができるとすることなど、到底許されない。

【13】第三に、日雇い派遣についても「2か月以内の期間を定めて雇用する労働者については、労働者派遣を禁止することが適当である」と記されている。これは2カ月とプラス1日の雇用期間なら日雇い派遣も合法ということになる。

【14】第四に、禁止業務や制限期間を超えた受け入れ、偽装請負などがあった場合、「派遣先は、派遣労働者に対して、派遣元の労働条件と同一内容の労働契約を申し込んだものとみなす」としている。派遣先の正社員との格差をつけられ、しかも派遣元の労働契約は過半は有期契約なのだから、期間工、有期契約社員にしかなれない。しかも、この措置が適用されるのは、派遣先が違法と知って派遣を受け入れていた場合に限られ、行政の勧告に従わない場合の罰則はない。

【15】第五に、登録型派遣については最長5年、製造業派遣についても3年間の「猶予期間」を設けている。景気の二番底、三番底が訪れ、さらなる派遣切りの嵐が吹き荒れようとしている時に、それを規制する効果はない。

派遣法を改悪・護持する民主党連合政権打倒!

【16】厚労省の試算でも、答申に基づく法改正で規制の対象となるのは、08年6月時点で140万人いた派遣労働者のうち44万人に過ぎない。むしろ、解雇法理の類推適用や「黙示の労働契約」の成立を認め救済されていたケースも違法とみなされないことになる。

【17】そもそも、答申は、「労働者派遣制度は、労働力の需給調整を図るための制度として、我が国の労働市場において一定の役割を果たしている」「企業においても、グローバル競争が激化する中で、労働者派遣は必要不可欠な制度」と、徹頭徹尾、資本家階級の立場にたって、派遣制度を護持する立場を貫いている。

【18】連合は、事務局談話でこの答申を「規制緩和の流れを転換し、労働者保護の視点で法改正をはかるものとして概ね評価できる」とした。製造業派遣や登録型派遣禁止に強硬に反対してきた電機連合やゼンセン同盟が評価できる内容だということである。

【19】国鉄分割・民営化攻撃と一体のものとして、新自由主義の攻撃の根幹にあるのが派遣法である。民営化、子会社化、外注化と一体で派遣法が使われてきた。しかし、派遣法ができたから非正規雇用労働者が増大したわけではない。労働組合が屈服し、資本に率先協力し、不安定雇用労働者の増大に加担してきたからだ。動労千葉は今春検修全面外注化阻止・反合運転保安を掲げて5波のストを打ちぬき、第二の国鉄分割・民営化決戦を闘い抜いき、6・13に国鉄闘争全国運動を出発させた。非正規雇用・外注化を許さない闘いの先頭に立っているのである。

【20】1960年代後半に米国から日本に入ってきた派遣事業は1970年代になって秘書、受付・テレックスオペレーターなどの業務に拡大し「事務請負サービス」などと呼ばれた。これは事務労働に広がる「偽装請負」である。労働省は1979年になって初めて「職業安定法に違反する労働者供給事業が拡大している」との認識に立ち、調査に乗り出す。しかしこの偽装請負は事務業務に浸透していて、派遣法はこの違法を追認し合法化する形で制定された。

【21】労働者派遣法は1985年に成立、86年に施行された。当初は秘書や添乗など専門的な13業種に限って認められていたが、96年に対象業務を26に拡大、99年には製造業を除いて対象が原則自由化された。2004年には従来禁じられていた製造業にも1年を上限に派遣が解禁され、07年には上限は3年に延びた。2004年を前後して「日雇い派遣」「スポット派遣」が市場を凌駕し始める。「常用雇用の代替にならない」「専門的職能を持った労働者を対象にするから派遣という仕組みでも劣悪な労働市場にならない」という立法時の方便は嘘であることが明らかになった。製造業への派遣の解禁は、正規を非正規に置き換えると同時に、派遣労働者の賃金引き下げをもたらした。2004年から2006年の3年間で派遣料金は7・1%減、賃金は7・8%減となっている。契約期間も3か月未満の派遣契約は一般労働者派遣事業で81・8%に上る。3人に1人が非正規社員である。

【22】総務省統計局の労動力特別調査によれば2010年1~3月期の正社員と非正規社員の数は正社員3363万人、非正規社員1708万人であり、3人に1人が非正規雇用労働者である。非正規社員の比率は派遣法が施行された1986年頃は16%台であったが、2008年には34%を超えた。青年労働者の非正規率は二人に一人が非正規であり、パート・アルバイトの9割は年収200万未満である。25~34歳の青年労働者の非正規雇用は1995年~2009年までの間に4・3倍も増加している。

【23】非正規雇用は①短時間性、②有期性、③間接雇用性の一つまたは複数の組み合わせによっている。「通常の労働者以上に長時間(3000時間以上にわたって)働く複合就労労働者がいる。複数の事業所(場合によったら5~6か所にも及ぶ)をかけもちで働くが、一つひとつの労働契約が週20時間以下である場合には、雇用保険も健康保険も適用対象外となる。

【24】長時間労働の原因は、低賃金であり、女性パートタイム労働者の平均時給で、複数の育ち盛りの子供を育てるのに支給される生活保護給付(生活扶助・医療扶助・教育扶助・住宅扶助・その他の扶助)水準を得ようとすれば、3000時間をはるかに超える労働をしなければならない。複合パート就労の最大の問題は、生きるために死ぬほど働かなければならないという低賃金」なのである。(『雇用形態多様化と労働者の健康』矢野栄二編著 「第4章 労働の商取引化と労働者の健康・安全」中野麻美著 79頁)
非正規雇用労働が労働者を殺し、病気に追い込んでいる。

有期労働契約が非正規雇用労働のもう一つの柱

【25】非正規雇用を生み出した根本は国鉄分割・民営化である。だから国鉄1047名の解雇撤回闘争は絶対に譲ることのできない根本の闘いなのである。これと一体の攻撃が派遣法であり、更に「有期契約」という雇用形態が非正規雇用労働者を非正規ならしめている決定的要因である。70年代は「限定雇用制度」と呼ばれ例外的雇用制度であったが、国鉄分割・民営化と派遣法制定と一体となり、更に1995年の日経連の労働問題研究会報告で有期契約労働が加速した。今回の労働者派遣法の改正が改悪だというのは、法律の「抜け穴」を利用してまかり通ってきた違法派遣を『改正』によって合法化しようということだからだ。その核心に派遣労働と有期契約がセットになっている場合の法的問題である。この雇用形態は究極の非正規雇用といえる。しかし、雇い止め解雇は闘えば勝てる。非正規雇用を許さない決定的闘いとして雇い止め解雇撤回闘争を位置づけなければならない。

【26】期間満了に際して更新拒絶(雇い止め)がなされる場合でも、雇い止めが無効になることが多々ある。労働契約法16条の解雇権濫用法理が類推適用されるからだ。

【27】労働契約に期間を定める場合には、法律で契約期間の上限が規制されている。改正労基法14条(2004年1月1日施行)により、いくつかの例外を除いて、従前原則1年とされていた上限期間が「3」年とされた。しかし、何故それまで1年が上限だったかといえば、戦前の年季奉公のような複数年労働者を人身拘束するようなあり方や、金銭で縛って複数年拘束して賃金と借金を相殺するような形で労働者を拘束するあり方を認めないために複数年契約を禁止してきたからだ。したがって上限が3年や5年に延びたことは有期契約と雇い止め解雇が前提となった不当な改悪である。ほとんどの有期契約の場合に当てはまるが、仕事が一時的・季節的とかでなく更新を繰り返してきたような場合には、解雇に関する法理が類推適用される。その場合は通常解雇と同様、解雇権濫用法理に照らして雇い止め解雇の有効性が問題となる。

【28】契約期間の定めのあるパート労働者、契約社員、嘱託社員にしても、実際は1年、あるいは1年未満の契約を何回も繰り返しながら更新し、長期に働いている労働者が多い。このような実質的に長期雇用となっているそれらの労働者については、期間満了というだけで直ちに契約を打ち切る(更新拒否・雇い止め)ことは不当なのだ。

【29】民営化・外注化は正規労働者を非正規労働者に落とし込める元凶である。有期契約・雇い止め解雇は不安定雇用・非正規雇用労働者を自動的に解雇する資本の側の手段となってきた。しかし闘えば勝てるのだ。非正規雇用撤廃の闘いの基軸に雇い止め解雇と徹底的に闘うことが必要である。上記の例は有期契約・雇い止め解雇問題であるが、これは派遣労働の有期契約にも当てはまる。派遣労働でも有期契約は期間が来たから自動的に解雇できるわけではない。期限の定めのない正規職労働者と同様に然るべき解雇理由なくして、期限が来たから自動的に解雇できるわけではない。非正規雇用撤廃の闘いはこういう事案でも徹底的に争うことである。

消費税と非正規雇用の関係

【30】『消費税のカラクリ』(斎藤貴男著 講談社新書 2010年7月20日第1刷)の著者斎藤貴男は消費税が10%になれば「失業率が10%、年間自殺者も5万人を超えるだろう」と述べている(7月10日 東京新聞)。日本の年間自殺者3万人という数字が2009年まで連続して続く発端が消費税が3%から5%に引き上げられた1997年の翌年からであることは偶然ではない。消費税の滞納をとりたてられた中小零細業者がそれを理由に自殺しているケースがたくさんある。消費税が倍に跳ね上がればそれが加速するのは火を見るより明らかだ。さらに斎藤貴男は非正雇用増大の原因に消費税があると指摘している。正社員に支払われる給与は消費税の「仕入税額控除」の対象にならないが、派遣社員らへの報酬は控除の対象になる。つまり非正規雇用の割合を増やせば、その分消費税の納付額が減るのだ。正社員を非正規に置き換えるのは人件費の削減が主たる目的だが、消費税の納付節約にもなるからだ。派遣社員への切り替えで消費税納入額が7百万減らせた会社の例が登場する。さらに以下のような記述もある。「ある大手の証券会社は消費税が導入される半年前、自社関連の人材派遣や管理事務の受託を主な業務とする子会社を設立し、7百人の社員を移籍させた。昨年には子会社を分社化している。この手続きによって、運用しだいでは証券会社は年間数億円の消費税を節約できる計算になる」(同122頁)「消費税法には資本金が1千万に満たない法人は、設立後の2年間は売上高の如何にかかわらず納税を免除される規定がある」(同116頁)ため、派遣子会社の設立・閉鎖、また設立という目まぐるしく繰り返される手法が続くのである。だから消費税の増税は派遣労働者などの非正規雇用を拡大し、失業者増大させることになるのだ。

結語

【31】『資本論』では資本主義の勃興期に女性の深夜労働や児童労働の実態が暴かれている。この時期を「自由主義」と言う。資本が無制限無制に労働者を搾取した。英国の労働者街では男性の平均寿命が35~6歳だ。女性の深夜労働による母性の破壊や児童労働の酷使は労働者が死滅してしまうかもしれない状況だった。工場法は労働者の闘いもあるが、国家による規制をしないと資本は労働者を絶滅してしまう可能性があったがゆえに制定された。新自由主義というのは労働基準法などの「労働者保護法」を撤廃し、工場法以前に戻せというものだ。経団連の経労委報告ははっきりと「工場法以前に戻せ」といっている。資本主義の勃興期のように資本の自由に労働者を搾取させろということだ。そのために労働者が絶滅してもかまわないという攻撃である。現実に非正規雇用労働者は結婚もできず、子どももつくることができない状況にある。非正規労働者のみならず、正規雇用労働者の青年労働者も過労死や自殺、精神疾患においこまれている。

【32】この攻撃の起点が国鉄分割・民営化攻撃であり、これに抗して闘ってきたのが国鉄1047名の解雇撤回闘争である。1047名闘争と動労千葉の闘いがNTTのような分割民営化攻撃を阻んできた。だからこそJR資本は検修外注化攻撃をかけて、第二次分割・民営化攻撃をかけ、1047名闘争解体の「政治和解」攻撃をかけてきたのだ。動労千葉の検修外注化決戦はこれまで以上の非正規化、9割非正規化攻撃阻止のたたかいであり、資本主義の究極の合理化攻撃との闘いである。派遣法撤廃、非正規職撤廃の闘いは資本主義社会の転覆と一体の闘いだ。重要なことは非正規化攻撃との根本と闘うことだ。それが国鉄1047名の解雇撤回闘争であり、検修外注化阻止決戦である。さらに究極の非正規化におかれている労働者を組織化して資本と闘うことが求められている。この両方の闘いを貫徹することが我々に求められている。どちらが欠けてもだめである。

【33】「派遣労働者がたった1日『今日はみんなで一斉に休んじゃえ』と団結してストライキに立ち上がったら、全国の生産ラインが全部ストップし、日本資本主義そのものを揺るがせるということだ。

【34】非正規雇用労働者の増大というのは、労働者に対する重大な攻撃であるけれど、しかしこの現実を逆手にとって労働者が団結して闘えば、そうとう思い切ったことができる。終身雇用制のように、企業が労働者を安定的に支配することはできない。いつクビにされるかわからない状況で働いていれば『会社あっての労働者』という会社への忠誠心なんてものは生まれない。いつだって平気で辞めていいわけだ。非正規雇用の労働者が団結したら、労働者から搾取と収奪を縦にしている派遣会社を揺るがすことはいくらでもできるということだ」(前掲『甦る労働組合』270~271頁)

(参考資料) 戦後労働法制の主な動き(小泉作成)

1947年 労働基準法(1日8時間、週48時間)
1985年 男女雇用機会均等法、労働者派遣法
1987年 労働基準法改正(週40時間)
週単位変形労働時間制、専門業務裁量労働制
1992年 労働基準法改正 時短促進法(年1800時間目標)
年単位変形労働制
1995年 労働問題研究会報告(日経連)
1996年 労働者派遣法改正 対象26業務に拡大
1997年 裁量労働対象業務拡大、女性の残業規制撤廃
1998年 有期雇用契約の上限を1年から3年へ
1999年 労働者派遣法改正 対象業務を原則自由化
2001年 4月に「会社分割法」(商法-施行。会社分割が容易に。労働者は分割先への移籍を拒否できない)
2002年 ホワイトカラーエクゼンブション導入を閣議決定(時間外規制適用除外)
2003年 労働者派遣法改正 派遣期間を3年、製造業も対象化
2006年 労働安全衛生法改正(加重労働対策)、時短促進法廃止
2007年 60年に1度の「労働ビックバン」(ホワイトカラーエクゼンブションについて2007年の国会で議論されたが未成立)
2008年 労働契約法施行(就業規則で労働条件変更、解雇トラブルの金銭解決も議論)
2010年 労働者派遣法改正案閣議決定(3月)通常国会で継続審議
10月からの臨時国会で審議