『改正労働契約法の詳解』の「学習ノート」

『改正労働契約法の詳解』(第1東京弁護士会労度法制委員会編 労働調査会 2013年2月28日初版)の「学習ノート」

合同・一般労働組合全国協議会事務局長 小泉義秀

はじめに

改正労働契約法は2012年8月10日に立法化された。18条、19条、20条がその条文だ。19条は即日施行になり、18条、20条は2013年4月1日に施行になった。本稿は『改正労働契約法の詳解』(労働調査会 2013年2月28日初版)の「学習ノート」である。CTSにおいて就業規則の改悪攻撃がかけられている。この攻撃はCTSにとどまるものでなく、全産別の課題だ。この攻撃は改悪派遣法と一体でこれから全国の職場で大問題化する。動労千葉のCTSの闘いは最先端攻防である。この攻撃に反撃する視点から、法的問題点について学ぶ立場でノートを作成した。

労働契約法18条とは

改正労働契約法18条は、有期労働契約が5年を超えて更新されたときは、有期労働契約者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換させる仕組み(無期転換ルール)を新設したものであり、その趣旨は有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることにある。
この5年の無期転換のスタートラインは施行日の2013年4月1日である。それ以前の期間は5年の期間に参入されない。
2013年4月1日を起点として、2018年3月31日までの通算期間がちょうど5年で雇いとめした場合は無期転換権は発生しない。
この5年の無期転換権は契約が一度以上更新されていることが必要である。したがって5年半の有期労働契約を結んでいて、5年を経過したからと言って無期転換権は生じない。あくまで一度以上の契約更新が必要である。

例えば一年の有期労働契約を更新してきた人の場合、2013年4月1日を起点とすると、2018年3月31日に転換権が発生する。そうして次の有期労働契約の期限が切れる2019年3月31日までの1年の間に無機転換の申し入れをすれば、2019年4月1日に無機転換することができる。これは意思表示すればよいので、書面などは必要ない。更にこの場合は使用者の承諾は必要ない。労働者がその意思表示をすれば転換権を行使したことになる。このように一方の意思表示で発生する権利を「形成権」という。
極端な例を挙げると、期日1日の有期労働契約の後に5年の有期労働契約を結んだ場合、2日目で転換権が生じる。無期転換できるのは二回目の契約の終了後の5年後ではあるが。
18条の最大の問題はクーリング期間である。先の例でいうと、2018年3月31日までの間に6か月間の無契約期間を置くと、通算5年の契約を過ぎても無期転換権は生じない。このクーリング期間を小刻みに行った場合の事例は煩雑になるのでここでは触れない。

北九州ではこのクーリング期間を使った無期転換逃れとの闘いが展開されている。公益財団法人北九州市環境整備協会ではいきなり本年1月に長年働いてきた有期労働契約の労働者の首を切り、6カ月間の失業期間をつくり、5年の無期転換をさせないための雇いとめ解雇を通告してきた。この攻撃に対して自治労全国一般福岡労組北九州環境整備協会分会の労働者44人は協会の提案の撤回と組合員の継続雇用を要求し、3月7・8日とストライキに立ち上がった。この攻撃は労働契約法18条の5年で無期転換ルールの脱法行為を実行したということなのだ。この規定は法の成立と施行の段階から大問題となっていた。こういうとんでもない手法で無期転換が阻まれることがあるからだ。それが現実の攻撃として襲い掛かってきた。こんなことが許されるなら、18条は全く意味のない法文と化す。
CTSの問題にひきつけて言うと「転換権が発生する前に就業規則を変更し、契約期間につき上限を設けることは可能か」否かということが問題になる。結論は「雇止め法理の適用が認められる者に対して、契約期間の上限を新設することは、就業規則の不利益変更に該当し、その必要性及び合理性が問題となる」(本書93頁Q&A)

「改正労契法19条の適用が認められる場合において、就業規則を変更し契約期問の上限を設けることは、客観的で合理的な理由及び社会的相当性が認められない限り雇止めされない(ないし契約締結の申込みを拒絶されない)という既得権を不利益に侵害することになるため、就業規則の不利益変更(労契法10条)に該当する。」「改正労契法19条1号の適用が認められる場合、すなわち、有期労働契約の実態が無期労働契約と実質的に異ならない場合において、事後的に契約期間の上限を新設することは、無期労働契約と異ならないという実質面を一方的に変容させることになるため、認められないと解される。そこで、同条2号の適用が認められる場合、すなわち、無期労働契約と実質的に異ならない程度には至っていないとしても、雇用継続に対する合理的期待は生じている場合において、契約期問の上限を新設することが、就業規則の不意利益変更の必要性及び合理性を満たしているかが問題になる。」(同93頁)

座談会では第1弁護士会の石井妙子弁護士が次のように述べている。
「これから契約する人については5年上限は全く問題ないと思いますが、既に長期の人については、これから更新上限規定を入れられるかどうかというのはやはり大問題だと思います。もちろん、合意ができればそれは問題なく、たとえ今まで10年いた人でも合意ができればよいのですが、『今後はこういう制度になりましたから』と就規則に定めることでできるのかどうかという問題と、合意してくれない時に、『じゃあ更新が成立しませんね』と言って切れるかどうかです。切れないとすれば平行線のままです。雇用継続の期待はずっとあると言っている人と、いや、私は5年だと思っていますという使用者と、中途半端な契約状態を維持したま1年後、転換権が生じる前に雇止めできるかという話になるわけで、実務的にはそのあたりが問題だと思います。」
小林譲二弁護士は「既に雇用している有期労働者に対して、更新上限規定を入れることは公序に反すると思います。本来5年を超えて使用し無期転換権が発生するという場合に、それを回避するために、例えば4年11か月あるいは更新は4回にして5年で終了という条項を入れさせることは無期転換申出権を法定した趣旨、即ちこの条項は無期契約とすることによって雇用を安定させようとしたものであり、公序であると同様に強制法規と解すべきだからです」(同194頁)
では労働契約法19条とはいかなる法律なのか?

労働契約法19条

改正労総契約法の趣旨については厚生労働省の立法化された当日の通達がわかりやすい。基発0810号第2号という。
「有期労働契約は契約期間の満了によって終了するものであるが、契約が反復更新された後に雇止めされることによる紛争がみられるところであり、有期労働契約の更新等に関するルールをあらかじめ明らかにすることにより、雇いとめに際して発生する紛争を防止し、その解決を図る必要がある。このため、法第19条において最高裁判所判決で確立している雇止めに関する判例法理(いわゆる雇止め法理)を規定し、一定の場合に雇止めを認めず、有期労働契約が締結又は更新されたものとみなすこととしたものであること。」(本施行通達第5、5 (1))(同103~104頁)

ここで言われている最高裁の判例法理というのは東芝柳町工場事件判決 (最一小判昭和49・7・22民集28巻5号927頁) と日立メディコ事件判決(最一小判昭和61・12・4裁判集民149号209頁)である。この二つの判例をまとめたような判決がパナソニックプラズマディスプレイ事件判決(最二小判平成21・12・18労判993号5頁)における「期間の定めのある雇用契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在している場合、又は、労働者においてその期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合には、当該雇用契約の雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないときには許されない(最高裁昭和45年(オ)第1175号同49年,49年7月22日第一小法廷判決・民集28巻5号927頁、最高裁昭和56年(オ)第225号同61年12月4日第一小法廷判決・裁判集民事149号209頁参照)。」(同104頁)

19条の1が東芝柳町事件、2が日立メディコ事件の判例が法制化されたものだ。
東芝柳町事件は2カ月契約の労働者の契約が5回ないし23回更新されてきた事例である。この判決の重要なポイントは「あたかも期間の定めのない契約と実質におい異ならない状態で存在していたものといわなければならず、本件各雇いとめの意思表示は右のような契約を終了させる趣旨のもとにされたのであるから、実質において解雇の意思表示にあたる」と判示している点である。鈴コンの3カ月雇用の連続更新のようなケースがこれに当たる。しかしこのようなケースは今は少なくなっていて、日立メディコ事件のケースが多いとされている。

日立メディコ事件は労働者の継続雇用の期待の有無が問題になっている。有期労働契約がその後も更新されるに違いないという合理的期待を労働者が持っていたにも関わらずその期待を裏切られて雇いとめされるのは解雇権の濫用に当たるとの判示である。この期待権をめぐる判断はケースバイケースということになり、総合的に判断するしかないとされている。したがって更新を期待させない措置を資本が行っていれば期待権は無かったこととされる。期待権は反復更新したか否かには関係ない。期間1年の有期労働契約を締結した後、一度も契約更新していないにもかかわらず、労働者の継続雇用に対する合理的期待を認めて雇止めを無効とした判決として、龍神タクシー事件(大阪高判平成3・1・16労判581号36頁)があり、この判例はよく使われる。CTSと争った東部ユニオン組合員のKさんの雇いとめ解雇の裁判においてもこの期待権が問題になった。この裁判では一番困難と思われた期待権についいては勝利した。1回目の更新をしなかったことが解雇権濫用法理に当たることを認めさせたのだ。しかし別の件で雇い止めが有効とされた。この認定は出鱈目なもので、高裁では3名の裁判官の意思で解雇撤回をベースにした和解案を出してきた。CTS側はその和解を拒否して判決となり、控訴棄却の反動判決だった。この判決はJR-CTS体制を擁護するための政治判決と鈴木弁護士は断じている。本書でも判例集の中に引用されている(同336頁)。

今回のCTSの就業規則の改悪の問題についていえば、「合理的期待の認定の解消」が問題となる。報徳学園事件(一審)においては、一旦発生した合理的期待を解消するためには、「雇用の継続を期待しないことがむしろ合理的とみられるような事情の変更があり・又は、雇用の継続がないことが当事者間で新たに合意されたなどの事情を要する」と述べられており、近畿コカ・コーラボトリング事件では、労働者と使用者による「契約終了の合意」を、本田技研工業事件では労働者による「期待利益の放棄」を丁寧に認定したうえで、合理的期待が解消されているとの判断に至り、解雇権濫用法理の類推適用を否定している。本田技研工業事件では、労働者が何らの異議も述べていないという事情が認定され、かかる事情が合理的期待の解消の判断において考慮されている。
CTS側が一方的に就業規則の変更をしたからと言ってそれまで更新を繰り返してきた労働者が継続雇用を期待しない理由にはならない。本田技研のケースのように労働者側が争わなかったから解雇権の濫用ではないとされたのだ。闘えば勝てることを示している。

20条

労働契約法20条は「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」規定である。全労協傘下の労組でこれを活用して「均等待遇」要求の裁判闘争を行っているが、私はこんな曖昧な法文は無いと考える。したがってこの20条を活用した「闘い」にはあまり意味を見出さない。有期労働契約の労働者が社内食堂を使えない差別を受けているとか、正規には出ている交通費が出ていないとかそういうたぐいの差別撤廃には使えるが他の件では有期と無期の差異を前提とした相違がどのくらい認められるかはほとんど難しいと思う。最大の問題は有期労働契約である事だ。ここを撤廃させる闘いが最大の課題であり、ここで争わないで「期間の定めがあること」による労働条件の違いを争っても意味がないと私は考える。

まとめ

以上まとめた以外にも重要な論点があるが省略するが、いくつか確認しておきたい。
一つはこの無期転換の労働者の労働条件は有期契約の時の労働条件と変わらなくて良いとされている。有期が無期になっただけで他は同じだというのだ。したがって正規雇用になったわけでなく、あくまで期限の定めがなくなっただけだという判断だ。するとこれは有期と正規の間の中間形態の雇用形態になる。したがってこの新しい雇用形態の就業規則が必要になるか否かも問題になっている。準正社員制度と同様の問題がある。

第2は改悪派遣法との関連である。2015年10月1日に施行になった直接雇用のみなし制度はいわゆる偽装請負となった場合のペナルティとして派遣先が直接雇用をしなければならないとされる派遣先資本からは「望まない雇用」が強制されるという認識をしていた。本著を取りまとめる安西愈(まさる)弁護士はそういう認識だ。これを阻止する意味で派遣法が改悪された。
労働契約法18条、19条関係も同様である。安西弁護士は「我が国企業の雇用体系を混乱させる法改正」と述べていた。法律の立法過過程から無期転換前に就業規則の改悪や雇いとめが横行するに違いないと言われてきたわけで、逆に言えば18条は5年以内の雇いとめを促進する法律だったと言えなくもない。その意味で、今回のCTSの就業規則改悪は派遣法改悪と同様の資本の側からの既成労働法を破壊する立法当初から予見されていたクーデターと言える。
したがって労働契約法に依拠した闘いでは勝てない。有期労働契約そのものが問題である。派遣法撤廃、非正規職撤廃の論理で闘わなければならない。動労千葉の反合運転保安闘争運転がやはり闘いの基軸になる。外注化・非正規化、有期労働契約によって5年で雇いとめ解雇を絶対のものとするのは死刑執行の日が決まっているような雇用形態である。同じ職場にいろいろな会社のいろんな雇用形態の労働者が存在し、労働者同士の協同労働-労働過程そのものがバラバラに分断される。これでは生産も安全も守れない。労働の奪還闘争の核心に動労千葉の反合運転保安闘争があるのだ。