改悪入管法強行採決弾劾! 2018/12/08

改悪入管法強行採決弾劾! 2018年・12・8

合同・一般労働組合全国協議会事務局長 小泉義秀 20181208.PDF

はじめに

 改悪出入国管理法が8日未明の参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立しました。改悪入管法は2019年4月に施行されます。衆参両法務委員会での審議時間は計約35時間。これまでの重要法案に比べ、極端に短いです。新たな在留資格「特定技能」を2段階で設け、「相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ外国人には「1号」を与えるとされています。最長5年の技能実習を修了するか、技能と日本語能力の試験に合格することが要件です。在留期間は通算5年で、家族の帯同は認めず、農業や介護など14業種での受け入れを想定しています。
さらに高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ人に与える「2号」は1~3年ごとなどの期間の更新ができることになっています。更新時の審査を通過すれば更新回数に制限はなく、事実上の永住も可能となります。配偶者や子どもなどの家族の帯同も認められます。
1号での受け入れ人数は5年間で最大34万5150人を想定されています。詳細な数字や受け入れ業種は年内に発表する分野別の運用方針に明記するとされました。特定2号の導入を検討していた「建設」「造船」の2業種は数年は見送る方向です。1号による在留者数などを踏まえ、2号へ移行するための試験整備などに着手することになりました。
4月には法務省入国管理局を改組し、受け入れや在留管理を一元的に担う「出入国在留管理庁」を設けます。法施行の2年後をめどに制度を見直し、経済情勢の変化や運用を通じた課題などを反映するとされています。
入管難民法などの改悪案は、在留資格の技能水準などを定めず、具体的な制度設計は法成立後の法務省令などで決めることになっています。法案には「法務省令で定める」との記述が30ヶ所を超えます。省令は国会審議を経ずに、政府の判断だけで決めることができる「白紙委任」です。
立憲民主党の小川敏夫は7日の参院本会議で「法律が通った後にすべてを決めるのは白紙委任で、立法権の放棄だ」と指摘しました。
省令で定めるのは、新たな在留資格を得る外国人の技能水準や、技能水準を判断する試験内容、法律で禁止した外国人への差別の具体的な内容など。政府は受け入れるのは技能を持った外国人だけで、単純労働を認めるわけではないとしていますが、省令でいくらでも操作できるのでそういう言い訳は通用しません。
今回の入管法は「弁当箱」法案と揶揄されています。弁当箱にご飯だけ詰め込んで大枠の法律を先行させ、あとから省令で決めるというのです。30超の省令が後から追加されるのです。これは法律の具体的詳細の内容は政府に「白紙委任」することになります。自民党が憲法に新設しようとしている緊急事態法の先取りのようなやり方です。緊急事態法は憲法を停止して内閣の権限でいろいろな政令を出すことができるというものです。
大日本帝国憲法下においては議会の関与しない立法として緊急勅令(大日本帝国憲法第8条)と独立命令(大日本帝国憲法第9条)が認められていました。これに対して日本国憲法では国会が国の唯一の立法機関であると規定されています(日本国憲法第41条)。内閣には政令制定権が認められていますが(日本国憲法第73条6号)、法律を前提としない独立命令や法律に反する代行命令は禁止され政府独自の立法は認めておらず、法律を執行するための執行命令と法律により委任を受けた委任命令に限られています。また内閣が憲法改正を発議することはできません。内閣法第5条に改憲発議に関する記述はないのです。大枠の法律を成立させた後、省令でいろいろな中身を詰め込む手口は三権分立の解体であり、憲法の基本的な根本を破壊するものです。
 自民党の2012年改憲案は現憲法の基本的人権の部分を削除しようとしています。前回の講座の「働き方改革」・過労死問題も今回の入管難民法の改悪問題にも共通しているのは改憲攻撃が人間の基本的人権を剥奪するということ。「人手不足」「東京オリンピックの成功のために」何故死ぬまで働かされるのでしょうか? 外国人労働者を奴隷のようにこき使っても構わないというのでしょうか? 根本的な問題はここにあります。
 シャープ亀山工場で2900人が雇止めされたように、外国人労働者が都合よく使い捨てにされるのは火を見るよりも明らかです。
今回は柱を三つにしました。
一つは「特定技能1号」「同2号」はどのようなものか? その問題点に言及します。
二つめは「外国人技能実習生制度」とは何か? その問題点に迫ります。政府は「特定技能1号」「同2号」と「外国人技能実習生制度」は別な制度で、関係が無いと言っています。しかし、関係が無いわけがありません。密接に関係しているのでその点を暴露します。
三つめは「徴用工」判決や、徴用工問題とは何かという点について言及したいと思います。これは1965年の日韓条約とは何だったのか? 2015年12月28日の「日韓両外相共同記者発表」と軍隊慰安婦問題とも関連します。

1、「特定技能1号、2号」制度

ⅰ 従来建て前として禁止してきた単純労働への受け入れ

日本では外国人の単純労働は建て前としては原則として禁止されてきました。が、深刻な人手不足に対応するために、建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、介護、ビルクリーニング、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材産業、産業機械製造業、電子・電気機器関連産業の14の業種での単純労働を含めた就労を認める「特定技能1号」と、建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業の5つの業種で家族滞在や在留期間更新が可能な「特定技能2号」いう在留資格をつくるというのです。
11月2日に単純労働を含む外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案が閣議決定されました。安倍政権は「働き方改革」に「新たな外国人材の受入れ」を位置づけ、「従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技術を有し即戦力となれる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを構築していく必要がある」とし、単純労働力を導入しました。
ここですぐに政府の言っていることに大きな矛盾があることがわかります。「特定技能1号」「2号」は「一定の専門性・技術を有し即戦力となれる外国人材」と言っていますが、これまでも「専門的・技術的分野における外国人材」は受け入れてきました。今回の新しい制度はこれまで導入しないとしてきた単純労働を受け入れるということです。
技能実習制度の目的・趣旨の建て前は、「日本の技能、技術、知識を開発途上地域へ移転して開発途上地域の経済発展を担う『人づくり』に寄与するという『国際協力の推進』です。「技能実習制度」は日本の技術を開発途上地域へ移転して経済発展してもらうことが目的の制度だから、食堂の配膳などの単純作業をすることはできないことになっていました。
 一方、「特定技能」は外国人労働者としての在留資格であるため、宿泊業のように特定技能の対象となる業種であれば、食堂の配膳などの単純労働をおこなうことができるのです。
 しかし、技能実習生制度の下でも技術を学ぶことはできなく、単純労働に従事させられてきたのは事実です。11月末に配信されたワシントンポストの記事は「米紙が見た『外国人を使い捨てるニッポン』「ミャンマー人技能実習生『私は奴隷だった』週100時間労働で月6万円」というタイトルでその実態を暴露しています。「ミャンマー人の技能実習生ワー・ヌさんは岐阜の縫製工場で長時間労働と上司からの怒号に耐え続けた」と書かれています。2017年末の直近の事です。
「先進技術を誇る国で、新たなスキルを学べるチャンスに期待を膨らませた。…しかし、日本で彼女に与えられた仕事は、段ボールに衣服を詰める単純作業だった。週6日、朝7時から夜10時まで、同じ作業を繰り返した。深夜まで働かされたり、週7日勤務になったりすることもあった。それで月給は6万円。約束されていた額の半分しかなかった。おまけに上司は彼女を怒鳴り続けた。」 
米国務省は、世界各国の人身売買の実態をまとめた年次報告書のなかで、日本の技能実習制度はしばしば強制労働を引き起こしていると指摘しています。
技能実習制度の大きな問題の一つは、雇用主を変えることができない、つまり転職の自由が許されていないことにあります。苦情を申し立てれば、就労ビザを奪われ強制送還されかねません。
そうした過酷な環境が要因となり、大勢の技能実習生が失踪しています。2017年は約7000人、2018年は上半期だけで4300人以上が姿を消しました。失踪者の多くは、不法就労者となるのです。
識者らに言わせれば、技能実習制度は2つのステレオタイプを助長しています。外国人を「日本社会の一員ではなく安い労働力」とみなし、失踪者を「強制労働の犠牲者ではなく犯罪者」とみなすことです。そのような偏見は、メディアによって誇張されることも少なくありません。たとえば、フジテレビが10月に放送して炎上した『タイキョの瞬間!密着24時』がそうでした。
不法滞在者の強制送還をおこなう入管の仕事を取り上げた同番組は、入国警備官たちの奮闘ぶりをドラマチックに描いていました。その半面、技能実習制度の問題点や入管収容施設の劣悪な環境について触れていなかったことが批判されたのです。
ワー・ヌさんは、JAM(金属産別労組)と在日ビルマ市民労働組合の助けにより、就労ビザを保持したまま、岐阜県内の違う縫製工場で仕事に就くことができました。在日ビルマ市民労働組合はJAMの傘下にあり、江東区猿江に事務所を構えています。

ⅱ 特定技能1号・2号概要

 特定技能の外国人は、原則として直接雇用ですが、分野の特性に応じて派遣形態も可能とされています。また、許可された活動の範囲内であれば転職も認められます。
 新設される「特定技能」と従来の就労系在留資格「技術・人文知識・国際業務」と「技能」との主な違いは、従来の就労系在留資格では単純労働ができないという点以外に、学歴要件や実務経験要件も外国人が日本で就労できない障壁となっていたその壁を取り除きました。特定技能はこういった学歴要件や実務経験要件がないことも大きなポイントです。
 特定技能には、相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格「特定技能1号」と、同分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格「特定技能2号」が新設されます。特定技能1号の技能水準は、受入れ分野で即戦力として活動するために必要な知識又は経験を有することされ、その知識、経験は業所管省庁が定める試験等によって確認するとされています。 
 特定技能1号の日本語能力水準は、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有すること」を基本としつつ、受入れ分野ごとに業務上必要な能力水準を考慮して定めるとされます。日本語能力水準は試験等によって確認しますが、技能実習2号を修了した人は、この試験等を免除されることになっています。そのため、特定技能1号の5割は技能実習2号を終了した人になると言われています。技能実習と特定技能1号、2号は別の制度と言いながら、技能実習修了者がその対象であることは明らかなのです。
 在留期間の上限は特定技能1号は最長で5年間。特定技能1号は、その家族が日本で一緒にすむための在留資格「家族滞在」は取得できません。特定技能1号外国人に対しては、「受入れ機関」又は登録を受けた「登録支援機関」が日本での活動を安定的・円滑に行うことができるようにするための日常生活上、職業生活上又は社会生活上の支援を行うとされています。
特定技能2号への移行は業所管省庁が定める一定の試験に合格すること等で、特定技能1号から特定技能2号へ移行することが可能になります。
 在留期間の上限は在留期間の更新ができ、条件を満たせば永住申請も可能となることを検討されています。別の就労系の在留資格である「技術・人文知識・国際業務」や「技能」「経営・管理」でも在留期間の更新や条件を満たした場合の永住申請が可能なので、特定技能2号は従来の就労系在留資格に近い在留資格と言えます。特定技能2号は家族の帯同が可能となるとされています。
特定技能の制度には「受入れ機関」と「登録支援機関」という2つの機関があります。登録支援機関とは、受入れ企業に代わって支援計画の作成・実施を行う機関です。登録団体機関として登録できる対象は、支援体制を備えた業界団体、民間法人、社労士等の幅広い主体を想定されています。
 試験に合格すれば「特定技能2号」に移行することができ、長期滞在が可能で家族の帯同も認められるため、「事実上の永住も」などと報道されましたが、山下貴司法務大臣は2号について「永住を可能とするものだというのはミスリーディング」「雇用契約の更新がされない限りは、在留期間の更新は許可されない」と言い放っています。
「一定の専門性・技能を有する」とされますが、そのベースは「現代の徴用工」「現代の奴隷労働」と国際的非難を浴びている「外国人技能実習制度」です。「高度な技術移転」などを建前とする技能実習制度は、外国人留学生の資格外労働と共に日本で働く外国人労働者の主力であり、その多くが単純労働に従事しています。
 昨年11月1日、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図る」として技能実習法が施行されましたが、日立製作所や三菱自動車などの大企業で実習生に単純労働をさせていたことが次々に発覚、福島第一原発事故の除染作業に実習生を従事させるなど、問題は拡大しています。
 外国人技能実習制度は直ちに廃止されなければなりません。まして、この悪名高い技能実習制度の上に積み上げようという「特定技能1・2号」の創設など絶対に認められません。
 経団連の中西宏明会長は「経団連の意見を相当反映した方向だ」と語り、10月25日の自民党法務部会のヒアリングでも経団連は「人手不足の声に真摯に対応してもらえた」と歓迎しました。 極右・安倍政権は、差別・排外主義を扇動し外国人排除を叫びながら、外国人労働者を搾取し使い捨てにしようとしています。これこそ、改憲と戦争に進む安倍政権の最弱の環です。
 中南米などの日系4世を受け入れる新たな在留資格が7月1日に施行されましたが、10月中旬までに発給されたビザはわずか2件! 18歳以上30歳以下の日系4世を対象とし、就労を認めるこの「4世ビザ」も、日本滞在の上限が5年、家族の帯同も認めないという非人間的なものです。年間4千人を見込んでいた安倍政権は大打撃を受けています。

2、外国人技能実習生制度の問題点

ⅰ 実習生69人死亡を公表

 法案が参院で強行採決されるその日の朝に2015~2107年の3年間で計69人の外国人技能実習生が死亡していたことが公表されました。6日の参院法務委員会で立憲民主党の要請で法務省が関連資料を提出したのです。年齢別では20代が46人、30代が19人で、10歳代が2人もいます。死因は心筋梗塞や急性心不全、くも膜下出血などです。これは長時間労働による過労死です。自殺も6人です。20代の青年がこういう理由で死ぬのは過労死以外にあり得ません。
 この点について質問された安倍は「事実関係について知らないから答えようがない」と言い放ちました。許しがたいことです。

ⅱ 管理団体は人材ビジネス

東京新聞(11月14日朝刊)によれば愛知県一宮市の縫製工場で2年半前から働く技能実習生のベトナム人女性(28歳)の昨年1月分の賃金は手取り3万円余りです。来日前に交わした契約金額は8万5千円だったといいます。ミシンの技術を身に着けることができるという話でしたが単純なアイロンかけの作業ばかりやらされるのです。渡航費や語学研修費などでの借金は60万円。会社の家賃は2万1千円のはずでしたが働き始めると3万1千円が給与から引かれていました。
 11月21日に参議院会館の院内集会で発言した元実習生の中国人男性(38)は「想像もつかない残酷な働き方だった」と振り返ります。2005年に来日し、栃木県の農園で1日14~15時間働きました。住宅費として月6万円が引かれ、手取り賃金は月7万5千円ほどでした。(東京新聞11月23日)
 技能実習生制度は「研修生制度」が改正されて1993年に創設。対象職種は農業、建設、食品製造、介護など80に上ります。法務省によれば、今年6月末時点で日本にいる技能実習生は約28万5千人。実習生の内訳はは現在ベトナム45%、中国28%、フィリピン10%、インドネシア8%です。
 管理団体は昨年11月に施行された技能実習適正化法で認可制となり、法相と厚生労働相の監督権限が強化されました。今年10月時点で2337団体あり、協働組合など非営利法人であることが条件です。しかし実態は利益目的の人材ビジネス会社です。各地で実習生を募り、実習生を送り込むのです。
 実習生は送り出し機関と日本の受け入れ機関の二つから二重の中間搾取を受けます。中国やベトナムの場合はブローカーに保証金を支払うことで身柄が送り出し機関に預けられることになり、50万、100万円を支払う場合もありますが、払えない場合は借用書を書いて渡航するのです。

ⅲ 中国からベトナムへ移行

 外国人技能実習生は当初は中国が最多でしたが現在はベトナムが最多です。ベトナムでは、短期大学や大学の卒業生の就職難が問題となっています。学歴を積んでもなかなか良い仕事に就くことのできない若者が少なくありません。そこに目をつけたのが人材ビジネス企業です。
ベトナムの専門学校が日本への技能実習生の送り出しを手掛ける仲介会社と提携し、技能実習生として来日する学生の募集を行っています。専門学校で金属加工を学んだ学生にとって、金属加工をはじめとする製造業部門の高い技術を有する日本は、技術や知識を伸ばすことのできる大きな可能性を秘めた場所に思えます。
 技能実習生の受け入れ機関を監視する役目を担っている国際研修協力機構(JITCO)は、ホームページで、「技能実習制度は、最長3年の期間において、技能実習生が雇用関係の下、日本の産業・職業上の技能等の修得・習熟をすることを内容とするもの」と説明しています。また、「この制度は、技能実習生へ技能等の移転を図り、その国の経済発展を担う人材育成を目的としたもので、我が国の国際協力・国際貢献の重要な一翼を担って」いるとします。
ベトナムでは今も技能実習生として日本にわたる若者たちの中には、本国よりも高い収入を得るという経済的な利益だけでなく、「日本の技術」「日本の働き方」を身につけることへの期待に胸を膨らませている人も少なくありません。
 ベトナムでは、日本の対ベトナム政府開発援助(ODA)や日本企業の対ベトナム投資の規模が大きい上、日本製品が普及しており、日本はハイテク技術を有する「経済大国」として、ととらえられています。
 ベトナムでは政府の認可を得た仲介会社だけが技能実習生を送り出すことができます。こうした仲介会社は技能実習生の候補者を集める際に「日本の技術」「日本の働き方」という文言を打ち出し、若者たちを日本での技能実習へと引き付けようとしています。
 一方、送り出し地ベトナムで展開されている「実習生ビジネス」において、技能実習生は搾取にさらされています。技能実習制度においては、日本という受け入れ先国で技能実習生が搾取されるだけではなく、送り出し地においても搾取の構造が構築されていると言えます。
 ベトナム人が技能実習生として来日するためには、日本にわたる前に、仲介会社(いわゆる「送り出し機関」)に対して、高額の渡航前費用を支払うことが求められます。
 その額はさまざまですが、巣内容子というジャーナリストが取材したクイ―さんは60万円程度を仲介会社に「保証金」として預けることが要求されました。銀行口座をつくり、そこに60万円程度の預金をしてから、その口座の通帳を仲介会社に預けることになります。
この「保証金」は3年という契約期間を満了すれば、手元に戻ってくるもので、契約に違反すれば没収されるという預け金です。この「保証金」を取り戻そうとすれば、何か起こっても、途中で技能実習生としての就労をやめることができないのです。
 クイーさんはさらに、渡航前訓練センターで学ぶ日本語の授業料、ビザ(査証)やパスポートの手数料、航空券、各種の必要書類の手数料として、40万円以上を仲介会社に支払います。つまりクイーさんは来日前に、まだ何も稼ぎを得ていない段階で、日本へ技能実習生としてたるため渡航前費用として計100万円程度を支払ったことになるのです。
 ベトナムの最低賃金は2016年1月に、最低賃金が最も高いハノイ市やホーチミン市などが入る「地域1」で月350万ドン(約157米ドル、約1万7,555円)です。ベトナムの賃金水準から見ると、100万円という金額は非常に大きなものになり、簡単に支払うことができないものです。日本の水準から見ても、100万円は高額です。
 技能実習生として来日するベトナム人は、そもそもお金を稼ぐという目的を持った人たちであり、こうした大金を手元に持っていないケースがほとんどです。
 そのため、ベトナム人技能実習生の大半が借金をして、渡航前費用を工面しています。巣内容子が取材して移住労働経験者に話を聞いた中では、渡航前費用のほぼ全額を借り入れたというケースも少なくなかったそうです。
 借金があるために、就労環境や賃金をはじめとする処遇などに問題や不満があったとしても、受け入れ機関に対し、苦情や不満を訴え、状況の改善を求めることは容易ではありません。
 日本ではこれまでに、受け入れ機関が外国人技能実習生を「強制帰国」させるケースも発生しており、こうした中で、もしも技能実習の期間が満了するのを前に帰国させられることになれば、日本での技能実習生としての就労の中で満足に稼げないだけでなく、多額の借金が残ってしまうことになります。そして、それだけ多額の借金をベトナムで稼ぐことが困難な中では、技能実習生とのその家族の経済状況は一気に悪化します。こうした借金にしばられ、拘束された状況が、技能実習生の権利や自由を奪うのです。
 この彼の場合の収入は、研修1年目には基本給9万3,000円程度で、そこから税金、保険料、「家賃」2万5,000円を引かれると、手取りは6万5,000円だけ。この手取りから食費などを出すと残ったのは月に3~4万円だけになります。
 2年目、3年目は基本給が11万8,000円ほどで、保険料、税金、「家賃」を引くと、手取りは9万5,000円程度になります。そこから食費などの生活費を払うと、残るのは5万円程度です。 
 クイーさんは同僚のベトナム人実習生1人と会社が用意した部屋で同居をしていました。この際、1部屋に対し「家賃」は1人2万5,000円ずつ、2人で5万円を支払っていたことになります。
更に問題は、技能実習生は転職の自由がないため、どのような企業で就労できるのかは、運まかせの要素が多いことになります。
 実習生弁連という弁護士グループがあり、技能実習生の問題に取り組んできました。このメンバーが手掛けた事件では、研修生・実習生に対する時給300円という最低賃金割れの時給、賃金の未払い、賃金の強制貯金、過労死ラインを超えるような長時間労働の強要、強制帰国、セクハラ、パワハラ、恫喝、暴力、パスポートや通帳、印鑑の取り上げ、不当に高額な寮費や水光熱費の徴収、劣悪な住居環境といった数々の問題が露呈したといいます。
 2008年の実習生弁連発足からこれまでの経緯を振り返り、指宿正一(いぶすきしょういち)弁護士は、「(実習生の弁護を)やればやるほど、個別の事件が解決するだけではしかたない、この制度ではどう考えても人権が守られない、技能実習制度の廃止と、まともな外国人労働者の受け入れ制度の構築が必要だと思うようになった」と強調します。そして、「実習生弁連を10年やってきて、こんなに長くこの技能実習制度が存続するとは思わなかった。こんなにひどい制度は3~5年でなくなると思っていた。10年経ってもこの制度があることに、忸怩(じくじ)たる思いだ」と語っています。

ⅳ データ改ざんについて

 外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案は11月21日、衆院法務委員会で実質審議入りし、法務省は、失踪した外国人技能実習生に対する調査結果に誤りがあったことを陳謝する一方、失踪の主な原因が「より高い賃金を求めて」だったとの見解は維持しました。野党側は、失踪は実習生に原因があるかのような表現だと批判。調査結果の一部を閲覧した集計を基に、失踪者の約八割は最低賃金以下で働いていたとして反論しています。問題となっている調査は、失踪後に摘発された2870人から聴き取った2017年の調査。同省は当初、約87%が「より高い賃金を求めて」失踪したとしていましたが、約67%に訂正しています。法務委で山下貴司法相は、この点を「おわびしたい」と謝罪。国会答弁の修正には応じませんでした。
 法務省は、失踪の原因について新たな見解も示しています。従来の見解にあった「技能実習を出稼ぎ労働の機会と捉え」という表現を削る一方、「契約賃金以下」「最低賃金以下」の低賃金に「不満を持ち」という文言を追加。聞き取り調査で選択肢になかった「より高い賃金を求めて」という表現は削らず、この動機での失踪が「最も多い」としました。
 立憲民主党の山尾志桜里は「(最低賃金の保証という)正当な権利を主張しているのに、なぜ『不満』という表現を使うのか。問題意識が薄い」と批判。「(失踪は)実習生側の原因であるかのような書きぶりは、改める必要がある」などと見直しを求めました。
 その上で野党側は、失踪者から聞き取った個別の「聴取票」のうち、無作為に184人分を閲覧して集計した結果を説明。月収と一週間の労働時間が記された176人分について、時給を試算したところ、最低賃金が全国で最も安い鹿児島県の760を上回った人は、33人にとどまります。
 東京新聞が176人の時給を金額別に分類したところ、500円台が五十二人と最多。600円台(34人)と合わせ約半数を占めています。
 聴取票は理事らに閲覧が許可されましたが、複写は禁じており、野党理事らが手分けして書き写しました。法務委で山尾は「(2870人全体について時給を計算すれば)最低賃金割れの人が7~8割を占める可能性が高い」と推論。法務省の調査では、失踪の理由に「最低賃金以下」を挙げたのは0・8%の22人としています。ちなみに失踪前の月額給与は「十万円以下」が56・7%です。賃金不払いの違法行為も契約不履行の低賃金も横行する世界です。
 他の項目もあります。「指導が厳しい」が12・6%、「暴力を受けた」が4・9%。「その他」が15・3%ありますが、内訳は職場環境や労働条件への不満、人間関係などです。失踪という不都合な出来事を政府は、あたかも実習生側の問題としてきましたが、これら並ぶデータは雇用主側の不適切な問題に起因します。とくに技能実習生の大半は来日前、母国の送り出し機関にお金を払いますのです。金額は「百万円以上~百五十万円未満」が最も多く、38・3%。親族や銀行からの借り入れが多いのです。この問題をどうするのでしょうか。
 実習生は悲惨な待遇に耐えかねて逃げ出すのです。人間としての尊厳をかけ、生きるためです。 
 衆院法務委員会は11月22日、外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法の改正に関して有識者6名を呼んで参考人質疑を行いました。
 自民党が推薦した安冨潔・慶応大名誉教授は、外国人の受け入れは「わが国の経済社会基盤の維持に必要」と。入国管理局の人員を増強し出入国在留管理庁を新設することで「在留管理は一層強化される」と述べました。
 立憲民主党が推薦した指宿正一弁護士は外国人技能実習生制度について「構造的な問題がある。時給300円や400円で残業している実習生は今も数多くいる」と指摘しています。

ⅴ 野党の排外主義的な質疑、答弁

 11月13日の衆院本会議の質疑答弁では以下のような排外主義的な問答が為されています。
 国民・無所属クラブの階猛は「肝心な部分は成立後、法務省が省令で定めることになっている。…法務省が実質的に立法権を行使することになり問題だ」と聞きました。これに対して安倍は「在留資格に関する細かい点は法務省令で定める。業界ごとに異なる事情や雇用情勢を踏まえ、個別に検討するため法律で定めるのは適当ではない」と答えました。階猛が聞いたのは立法権に属する内容までも省令で定めるようなあり方で良いのかという批判です。安倍は質問にまともに答えず、はぐらかした上で法律ではなく省令で対応すると答えています。ここで重大なのは「雇用情勢を踏まえ」と述べている点です。人手不足ならば外国人を雇用し、人が増えれば外国人をただき出す省令で対応するという意味です。あくまでもご都合主義であり、外国人労働者を使い捨ての対象としか考えていないということです。
 維新の会の玉串誠一は「5年の在留期間の更新を認めるなど、実質移民とも思える特定技能2号を何故導入しなければならないのか。更新が無制限に認められれば、日本人の雇用機会を奪うのではないか」と排外主義丸出しの質問をしています。これに対して安倍は「外国人材を受け入れる必要がなくなった場合、新規入国を一時的に停止する規定も設けている。日本人の雇用に影響を与えない。」と平然と答えました。法律では無く省令でというのは法律で定めるとそれを変えるのは簡単ではないからです。省令で自由に外国人労働者を導入し、たたき出す仕組みを作ると宣言しているのです。
数字の誤りについて、法務省は「エクセルファイル上のデータの切り貼り作業中に必要な作業を忘れた」「類似のチェック欄に複数チェックしていた」「項目設定が適切でなかったことや担当者の理解不足」などと集計ミスを強調します。しかし意図的にデータを改ざんしたのは明らかです。
 2017年中に約4200事業所で長時間労働屋賃金未払の法令違反がありました。使い捨てにしている実態が数字で浮かび上がっています。奴隷的な技能実習生制度を基礎にして同じ構造を持つ特定技能制度を設けることは許されません。

Ⅵ 緊急対策の名目で受け入れ法案は先取りされている

「緊急対策」という名目で技能実習生制度を基礎にすでに外国人労働者を導入しています。東京オリンピック、パラリンピックの人手不足を理由に、3年の技能実習を終えて母国に帰るなどした人を一時的に受け入れる制度です。在留期間は原則2年以内で、受け入れは2015~2020年度の時限措置です。建設業では今年9月末時点でベトナム人、中国人など11か国、4011人が働いています。「しかし国交省の調査によると、17年度に建設企業518社の4割に当たる204社で時間外労働の割り増し賃金が少ないなどのケースが見つかり、改善指導を受けた。失踪した外国人も35人いた」(12月1日『東京新聞』特報部)
 この技能実習生の平均年収は300万円に満たなく、建設業界が目標とする年収(20代)450万円に遠く及びません。安上がりの使い捨て労働力として使われているのです。

3、外国人技能実習生制度が「現代の徴用工」と言われる所以

 10月30日に韓国の大法院(最高裁に相当)が「元徴用工」に対して、計4億ウォン(約4000万円)の支払いを命じた判決をはじめ、その後の三菱重工、元朝鮮人挺身隊の女性の判決に対する批判なされています。日本政府は、過去に日韓両政府が合意した内容を否定するものとして、「日韓関係の法的基盤が揺らいでしまう」「100%、韓国側の責任において(解決策を)考えることだ」(河野太郎外相)と述べています。更に日本政府は従来原告に対して使ってきた「徴用工」という呼称を「労働者」と言い換える姑息な対応をしています。安倍は11月1日の衆院予算員会で、朝鮮半島からの動員には「募集」「官の斡旋」「徴用」の3種類あって「今回の原告は募集に応じた人々」と述べています。しかし「募集」は政府の計画に沿って、政府が承認した人数を募ったのです。国民徴用令が朝鮮半島で適用されたのは1944年でしたが、それ以前の1939年から戦争遂行のための労働力配置を定めた「労務動員計画」(後の国民動員計画)で朝鮮半島の人々も労働力として毎年計画的に送り出されました。募集で集まらないと朝鮮総督府を通して斡旋がはじまりました。行政の指示を受けての募集というのは半ば強制的な徴用です。だから徴用工という言葉をこれまで使ってきたのです。安倍、河野の方が、日韓関係双方の歴史的事実関係を無視しているのです。
日本と韓国は1965年に日韓基本条約及び関連する四つの協定を結びました。この協定には「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」があり、これを略して「請求権協定」と略した言い方をします。
この第2条1項に両国は「両締結国及びその国民(法人を含む)の財産、権利及び利益並びに両締結国及びその国民の間の請求権に関する問題が、1951年9月8日にサンフランシスコ市で署名された日本国との平和条約第4条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたことを確認する」とあります。
安倍や河野が持ち出すのはこの文言で、この協定が戦後補償の裁判や、軍隊慰安婦とされた人たちの裁判の壁となってきたのは間違いありません。
しかし、この日韓条約を結ぶ過程でどういう議論がなされたかは秘密にされていました。その外交文書を開示させる運動が日韓両国で起きて、軍隊慰安婦の人たちのことについてはほとんど議論されていないことが判明しました。そこで韓国の憲法裁判所は2011年8月30日に慰安婦の女性たちの請求権が消滅したか否かについては「韓・日両国間の解釈上の紛争」が存在していることを認め、これを「協定第三条が定めた手続きに従って解決しないでいる被請求人の不作為は違憲である」との決定を下しました。その後日韓政府の間でのやり取りがいくつかあり、日本の国家権力による反人道的不法行為に因る個人の損害賠償請求権は、1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」(第二条)対象には含まれない、とする大法院判決(2012年5月24日)も下されています。この判決以前に韓国政府も過去に日韓請求権協定によっては、日本政府等、国家権力が関与した『反人道的不法行為』は解決しておらず、「日本政府の法的責任が認定きれる」という立場を示しています(2005年8月26日「民間共同委員会」決定)。
ただし、1965年の「経済協力」が「事実上の補償」=賠償という立場を韓国政府はとっています。それは1910年8月2日の条約=「韓国併合」=(朝鮮の植民地支配のはじまり)が無効であるとの立場に立った上のことです。しかし、日本政府は条約が合法的に成立したという立場をとっています。だから経済協力はいかなる意味でも賠償という立場には立っていません。植民地支配と1937年以降の戦争の被害を与えた賠償という考え方は日本政府にはありません。
因みに、旧日本軍に属した軍人や軍属への補償もしていません。恩給法と戦傷病者戦没者遺族等援護法には国籍条項・戸籍条項があり、1952年4月28日のサンフランシスコ講和条約の発効に伴い日本国籍を喪失した旧植民地出身者の補償は対象外です。更に確認しておきたいのは北朝鮮に対しては何の補償も、賠償も、謝罪もしていないということです。
12月4日の「東京新聞」に「韓国前最高裁判事の逮捕状請求」という記事が出ていました。これは朴槿恵前大統領などと癒着して元徴用工判決を先送りにしていた職権乱用の疑いで逮捕状が請求されたということです。この請求は12月7日に却下になりましたが。
「完全かつ最終的に解決されたことを確認する」という表現と似たような文言を最近も耳にしたことがあるかと思います。2015年12月28日の「日韓外相共同記者発表」です。
「今回の発表により,この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。」(岸田外相)「今回の発表により,日本政府と共に,この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」(ユン外交部長官)。これは軍隊慰安婦問題について、韓国が日本を非難したり、批判をしないという内容です。そのために韓国に財団をつくり、そこに日本が10億円を拠出し、日本大使館前に作られた少女像を撤去するよう韓国政府が関連団体に働きかけるという内容です。
 この共同記者発表は韓国民主労総の闘いを叩き潰し、日帝が朝鮮戦争に踏み込むための導入路となったものです。だから韓国ではこの「共同記者発表」に物凄い批判が集中し、闘いが爆発しました。少女像は未だ健在であり、財団は解散しました。
11月22日「東京新聞」は社説で「慰安婦財団の解散発表」「極めて残念な韓国の対応」と書きました。2015年12月28日の日韓外相共同発表を評価し、それを反故にした韓国政府の対応を批判しているわけですが、これは日本の「リベラル文化人」の意識の範疇であり「忘却のための和解」の論理そのものです。
 問題はこの「日韓外相共同記者発表」を日本のリベラルと言われる「文化人」が評価し、その水先案内人になったということです。この動きと一体になってこの「文化人」たちは『帝国の慰安婦』(朴裕河 パクユハ著 2013年刊、日本語版は2014年に朝日新聞社から出版)を賛美しました。『帝国の慰安婦』は韓国ではこの著作そのものが軍隊慰安婦の名誉を傷つけるものとして有罪判決が出ています。彼ら「文化人」はこれを言論弾圧だとする抗議声明を出しました。最初は54人。後に67名にまでなります。上野千鶴子、中沢けい、小森陽一、高橋源一郎等々。
 『帝国の慰安婦』の内容の核心は、「慰安婦は日本の戦争を遂行する『愛国』的存在であり、兵士と『同志意識』があり、慰安所の中では部分的でも」「愛と平和が可能であった」。主たる責任は軍ではなく業者だった…。という怒りなしには読めない内容です。これを鎌田慧は「歴史的作品」と絶賛し、高橋源一郎は「不動の恒星のように、揺れることのない基軸となるだろう」と高く評価しています。中沢けいは「朴裕河は歴史修正主義者とは正反対のまなざしを慰安婦被害者に注いでいる」と書いて、「日韓外相共同記者発表」を以下のように賛美しています。
「岸田外務大臣の談話の中に『軍の関与を認める』という一言が入っていたのには、従軍慰安婦問題解決へ真摯な関心を寄せていた人々にも驚きを与えた。」「慰安婦被害者であったことを名乗りでた女性の労苦に報いることもできるであろう。」
 この日本の「文化人」の立場と朴裕河の『帝国の慰安婦』を徹底的に批判した著が『忘却のための「和解」「帝国の慰安婦」と日本の責任』(鄭栄桓 チョンヨンバン著 世織書房 2016年3月刊)です。『帝国の慰安婦』を批判した著は他にもありますがこれほど優れた本はありません。2016年当時明治学院大学の准教授ですが、朝鮮大学校を出た新進気鋭の38歳の研究者です。
10月30日の住金の判決文は国交正常化の経緯については認めています。ただし「請求権協定は日本の不法な植民支配に対する賠償を請求するための協定ではなく、韓日両国間の財政的・民事的な債権・債務関係を政治的合意によって解決するためのものであったと考えられる」と判断しているのです。つまり原告に関していえば、未払い賃金の返済だけを意味していたということ。
 今回の訴訟は「原告らは被告に対して未払賃金や補償金を請求しているのではなく、上記のような(強制動員への)慰謝料を請求している」(判決文)のであり、日本による統治を「不法」としている韓国では、1965年の請求権協定に含まれていない慰謝料を請求できる、という論理構成になっています。
 自分の財産などを毀損された場合、相手に補償や賠償を求めることができる「請求権」は、そもそも人間の基本的な権利とされており、消滅させることはできないとの見解が多いのです。もし消滅させたければ、協定にその旨を明確に書く必要がありますが、1965年の日韓請求権協定には書かれていません。請求権をめぐる問題が「完全に解決」と書かれているだけで、無くなったのか、まだ有効なのかはっきりしないのです。請求権に関する協定と言いながら、請求権の対価として無償で3億ドルを出すのではないと日本側は主張していました。
 事実、3億ドルの性格については椎名悦三郎外相は次のように答弁しています。
「請求権が経済協力という形に変わったというような考え方を持ち、したがって、経済協力というのは純然たる経済協力でなくて、これは賠償の意味を持っておるものだというように解釈する人があるのでありますが、法律上は、何らこの間に関係はございません。あくまで有償・無償5億ドルのこの経済協力は、経済協力でありまして、韓国の経済が繁栄するように、そういう気持ちを持って、また、新しい国の出発を祝うという点において、この経済協力を認めたのでございます」(第50回国会参議院本会議1965年11月19日)これが有名な「独立祝い金」答弁です。
 請求権についても1991年8月27日の参院予算委員会で、当時の柳井俊二外務省条約局長が、「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない」と明言しています。
判決文は、「強制動員の負傷者を保護対象から除外する等、道義的次元から見た時、被害者補償が不十分であったと見る側面がある」と、韓国政府の努力不足を明確に指摘しています。
 判決文の最後には多数意見に対する2人の裁判官の補充意見が載り、戦後70年以上が経過しても、いまだに解決できない問題の本質が書かれています。
 まず「人間としての尊厳と価値を尊重されないままあらゆる労働を強要された被害者である原告らは、精神的損害賠償を受けられずに依然として苦痛を受けている」と、原告の状況に同情を示しています。そして2人の裁判官は補足意見を、こう結んでいます。
「大韓民国政府と日本政府が強制動員被害者たちの精神的苦痛を過度に軽視し、その実像を調査・確認しようとする努力すらしないまま請求権協定を締結した可能性もある。請求権協定で強制動員慰謝料請求権について明確に定めていない責任は協定を締結した当事者らが負担すべきであり、これを被害者らに転嫁してはならない」

結語

 戦後入管体制はその狂暴な牙をむけばむくほど、在日人民の怒りを巻き起こし、破綻を突き付けられてきました。入管法による一元管理として新たに在留カード制度がスタートした2012年7月9日以降も、制度の枠からはみ出した難民申請者・仮放免者、非正規滞在者が日本の地で生き抜いています。ここが安倍政権の支配の最弱の環であることは間違いありません。 
 重要なことは彼ら外国人労働者を救済の対象と考えるのではなく、共に闘う労働者階級として、労働組合のもとに組織して隊列を共にすることです。生きるために団結しましょう! 民族・国籍・国境を越えた労働者の国際連帯、共同闘争で戦争を止めよう!
 12月8日朝日新聞朝刊は通常国会開会日は1月25~28日の間。参議院選挙は7月4日公示―21日投票。6月21~26日の間に衆院を解散するとダブル選挙もあり得ると報じています。決戦の時が来ました。

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合同・一般労組全国協議会